第二百九十一話 竜神様と俺の話3(ローラン視点)
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ローラン、随分と悲惨な目に遭います。
それでは、どうぞ!
「追放……?」
「そうだ。貴様は、仮にも愛し子とされていた者。万が一、殺して祟りにでもあっては困るからな」
嘲る表情とともに、そんなことを言ったのは誰だったか。命までは取らないと言いながら、着の身着のままで一人、放逐されることは、この過酷な雪山の中で生き抜けということだ。竜人は、確かに強い生命力を持つものの、さすがに、自殺行為でしかない。つまり、彼らは、直接手を下すのでは、何かあったら困るということで、間接的に殺してしまおうと考えたのだろう。
「貴様には、このまま、国の外に出ていってもらう。良いな?」
どう足掻こうとも、それから逃れることはできない。重い鉄球をつけた手枷足枷をしたまま、俺は、靴も履かせてもらえず、雪山の国を無理矢理歩かされ、眠ることも許されず、何日もかけて、国外へと連れ出される。俺を連行するやつは、何度も入れ替わり、十人を越えた辺りで、門から背中を押され、倒れ込むことで、国外へと出る。
「あ、ぁ……」
奴らが何を言っているのかなんて、今の俺には聞き取れなかった。ただただ、疲れていて、とても、眠い。連行中に受けた暴力で、全身が痛いはずなのに、それすらも、感じ取れない。
(死ぬ、のかな……?)
このまま眠れば、きっと、俺には安らかな死が訪れる。
竜神様とは、毎日会っていたわけではないものの、今頃は、異変に気づいて、探し回っているかもしれない。しかし、竜神様の行動範囲は、とても限られている。竜神様は、昔は国内ならば動けたと言っていたが、今は、竜人達の居住区のうち、半分までにも満たない範囲でしか行動できないらしい。きっと、一日目にして、俺は、竜神様の目が届かない場所に移動させられていたはずだ。
ろくに食料も食べさせてもらえず、ただただ歩き続けた体は、もう、限界だった。
(眠、い……)
きっと俺は、十分に頑張った。きっと俺は、十分に生きた。例えそれが、竜人の中でもまだまだ子供でしかない年齢だとしても、俺は、必死に耐えたのだ。もう、解放されたとしてもバチは当たらないはず。
(竜神、様……最後に、会いたかっ、た……)
強い眠気に襲われて、俺は、いつの間にか目を閉じていた。竜神様に会いたいと思うのに、もう、体は一ミリたりとも動いてはくれない。疲れきった体には、休息が必要なのだ。
「ローランっ!!」
どこか遠くで、会いたかった人の声が聞こえた気がして、俺は、傷だらけの意識を闇へ落とした……。
まだまだ、いたいけな子供のローラン。
そんなローランが全てに絶望して、何も信じられなくなる一歩手前にいられたのは、竜神様のおかげ、ではありますが、それは果たして、良かったのか……?
それでは、また!