第二百八十四話 知りたい、知りたくない(ローラン視点)
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何を知りたくて、何を知りたくないのか。
まぁ、シリアスモードではありますな。
それでは、どうぞ!
いきなりディランが降ってきたときは驚いたが、それが、ユミリア様が作った魔導具のおかげだということに納得もしていた。きっと、俺達のうちの誰かの元へ、送るような魔法が込められていたのだろうと。ただ、問題なのが……。
「そりゃあ、また、随分とおかしなことになってるみたいだな」
初めて、ユミリア様の現状を聞くこととなった俺は、そう告げながらも焦燥感に駆られていた。何せ、ユミリア様の側に居るというロードという男が敵であることに間違いはないのだ。そんな危険な場所に、何も知らないままのユミリア様が居るという状況は、心臓によろしくない。
「やっぱり、早く、ローランが行かなきゃいけない、みたいだね」
落ちてきてから、少しの間だけ、意識を失っていたディランから、聞けるだけの情報を聞き終えたところで、セイはそんな結論を出す。
「そろそろ教えてくれ。俺に、何ができる?」
どうにも、その敵への対抗手段として、俺の存在は有効らしいとは分かるものの、具体的どういうことなのか、まだ説明を受けていない。そう思って尋ねると、セイは、少し躊躇った後……。
「気を、確かに持って、暴れたりしないで聞いてくれる?」
「お、おぅ」
それは、よほど困難なことなのか、セイの表情は苦悩に歪む。しかし、俺の了承によって、セイも決心がついたのか、口を開いて、話し始める。
「僕も、人から聞いた話で、確実なことかどうかは分からない。けど、今回の騒動は、想い人を殺されたと思ったヤツが、復讐しようとして起こしたことらしいんだ」
「はぁ? 想い人を殺されたって……ユミリア様の周りに、そんなヤツ、居なかっただろ?」
セイの言わんとしていることが分からず、質問すれば、セイは、大量の苦虫を噛み潰したかのような表情になる。
「ローラン、だよ」
「は?」
「ソイツの想い人はローランで、ローランの反応が消えたことから、ずっと、復讐するために準備をしていたらしい」
「……俺が、想い人……?」
「ローラン、もてもてっ!」
セイに説明され、コウに囃し立てられる。しかし、どんなに記憶を掘り起こそうとも、欠片たりとも、ソイツが何者かという情報が出てこない。心当たりだって、全くない。
「何かの、間違いじゃねぇの、か?」
「……僕も、そう思いたかった、けど、あれを見せられたら、信じるしかない……」
何を見たのか、非常に気になるところではあったものの、表情が死んだセイから聞き出すのは危険だと、本能が訴える。
(い、いったい、何が……?)
聞いたら、何かが終わってしまうと分かっているからこそ、俺は、何も聞かない。
「信憑性は、高いんだ。だから、きっと、ローランが行けば、状況が変わるはずっ」
そう告げたセイに、俺は、『分かった』以外の一言を返すことはできなかった。ディランの状態が整い次第、ディランはユミリア様の両親に預け、俺達は、ユミリア様の元へ向かうということで話が纏まり、とうとう、動き出すのだった。
セイが何を見たのかは、今は、ご想像にお任せします。
それでは、また!