第二百八十話 怖い人
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さて、今日は……久々な、ユミリアちゃん視点です!
それでは、どうぞ!
やっと帰ってこれた『モフ恋』の世界。会いたかったロード様にも会えて、幸せいっぱい……のはずなのに、私は、なぜか、ロード様が怖かった。
(何で……相手は、ロード様なのに……)
出会ったのは、私の五歳の誕生日パーティーの会場。ロード様、イルト様、アルト様の三人とその場で仲良くなり、ロード様とイルト様の婚約者になれたのだ。ロード様は、とても紳士的な方。イルト様は、ちょっと束縛が強い可愛い人。そんな、タイプの違う二人の婚約者として、私は、これまで懸命に勉強したり、もの作りをしたりしていた。だから、イルト様のことはもちろん、ロード様のことも大切なはず……なのに、なぜか、ロード様を前にすると、恐怖心がジワジワとせり上がってくる。
(イルト様は……最近、何だかよそよそしいし、かといって、ロード様に直接話すのは間違い。でも、中々、他の人と話せるタイミングがないんだよなぁ)
イルト様が離れる分、ロード様がベッタリとついてきている現状、他の誰かに相談、なんてことはできなかった。いや、もちろん、様々な道具で伝える術はあるものの、そうしてまで話さなければならないとまでは思えないので、そのままだった。
「どうした? ユミリア?」
「あ、いえ、何でも、ありません」
隣を歩くロード様をじっと見つめれば、ロード様はすぐさま反応してくる。
ロード様の外見は、黒目黒髪の長身の男性。私達と比べて、六つ年上であるため、現在、十八才だ。その顔立ちは、絶対に女性が放ってはおかないだろうと断言できるほどに整っており、無表情だと、かなり冷たい印象を与える。
「そ、それより、もうそろそろ、学園祭が始まるんです。ロード様も、来てくださいますか?」
「あぁ、そうだな。ちょうど、節目でもあるし、行かせてもらおうか」
節目、というのが、どういう意味なのかは分からないが、ロード様が来てくれるという事実に、私の心は浮き立つ。
「もうすぐ、だよ」
「? ロード……様?」
何が『もうすぐ』なのかを尋ねようとした私は、その瞳のあまりの冷たさに、ゾクリとしたものを感じる。
「大丈夫。ユミリアは、助かるからね? あぁ、あと、イルトも、ね?」
「あ、の……何の、話ですか?」
ものすごく、嫌な予感がする。しかし、ロード様がそれに応えることはない。ただただ、どこか遠くを見て、恐ろしく冷たい表情を浮かべるだけだ。
(何かを忘れている気がする……)
何か、大切なことを、きっと、今の私は忘れている。しかし、それを思い出すことは、どう頑張ってもできなかった。
紳士的に、エスコートして、優しく接してくれるロード様は、その日も、私から離れることなく、ずっと、一緒だった。
ユミリアちゃん、何かがおかしいことには気づいてますが、その先までは分からない模様。
それでは、また!




