第二十五話 封印
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今回のお話は、まだまだ魔境の中。
それでは、どうぞ!
「ふ、ふんっ、僕も、集めてきてあげるよ」
鋼が恐ろしいスピードで森に走って行ったのを見て、セイは慌てたようにそう言うと、背中に美しい蝶のような青と金の羽を生やして飛んでいく。それも、鋼に負けず劣らずの猛スピードで。
「みゅっ」
唐突に一人残された私は、さて、これからどうしようかと辺りをサーチで調べてみる。
(……すごい勢いで魔の実らしき反応が消えていってるのは……二人の仕業、だよね?)
この森の魔の実を根こそぎ採り尽くすのではないかという勢いに、私は対応を間違えただろうかと真剣に悩む。
「ユミリアァァァ!」
と、その時、サーチの範囲を越えて魔の実を採取していたらしい鋼が戻ってくる。
「みゅ? どうちちゃにょ? (みゅ? どうしたの?)」
採取した魔の実は、恐らく、私が前に鋼へストレージの魔法を付与したため、その中にあるのだろう。相変わらずキラキラと光を撒き散らす鋼に、私は首をかしげて問いかける。
「変なの、あった!」
「へんにゃにょ? (変なの?)」
「乗って!」
何が何だか分からないが、鋼は私をその場所に連れていきたいらしい。
「みゅ、でも、しぇいが……(みゅ、でも、セイが……)」
「呼んだ?」
「みゅうっ!?」
セイの名前を呟けば、即座に、セイ本人が目の前に現れる。転移を使った形跡はないため、どうやら鋼が私の方へ引き返したのを察知して来てくれたのだろうと分かる。
「ふーん? なら、行ってみればいいんじゃない? ……僕も、ついていってやらなくもないよ?」
鋼から話を聞いたセイはそう反応して、同行を求めてきたので、私はもちろん、セイも連れていくことにする。
「みゅうっ! もっふもふぅ!」
「……ユミリアは、こんな毛玉の方が好きなの?」
「ぼく、毛玉じゃない……」
装備の力にものを言わせて、鋼の背中に飛び乗った私は、その美しい毛並みに顔を埋める。すると、私の後ろに飛び乗ったセイは、鋼に嫉妬したらしい。
「みゅっ、しぇいはとってもちれいにゃにょ! だかりゃ、ぎゅうっ、にゃにょっ(みゅっ、セイはとっても綺麗なの! だから、ぎゅうっ、なのっ)」
「っ、ば、バカじゃないの? ほ、ほら、行くよ!」
そう言いながらも、私が落ちないように私を後ろから支えてくれるセイは、優しい。そして、鋼もそれを理解しているのか、特に何も言うことなく、ゆっくりと走り出す。
「みゅうぅぅうっ!」
素早く流れていく景色に、私は楽しくなって歓声を上げる。意識が赴くまま、キョロキョロと辺りを観察すれば、その度に、セイがガッチリと後ろから支える手に力を入れてくれる。
「着いた」
短いながらも、楽しい鋼達とのお散歩は、その言葉で終わりを告げる。そして……。
「……こりぇ、にゃんにょふーいん? (……これ、何の封印?)」
目の前には、巨大な一枚の岩に張り付けられるようにして、真っ黒な鎖で雁字搦めに囚われた、黒衣を纏う幼子が居た。
魔境の中で囚われた幼子。
はてさて、その正体とは?
それでは、また!