第二百四十二話 未完成と未完成
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う、うん、久々に寝落ちしそうでしたが、なんとか、持ちこたえましたぞっ。
それでは、どうぞ!
「うーん……これは、不味いねっ」
読み終わった私の一言にミーシャが不安な表情を見せる。
「お姉様、どう、でしたか?」
「うん、結論を言うと、このままだと、ギリア君は今の姿のままで固定されちゃう。それが、この薬の重大な欠陥だよ」
「固定……そ、それって、元の姿に戻れないってことですか!?」
「そう。本来の年齢から十歳以上違う年齢の見た目になっちゃってるわけだから、色々大変だろうね」
貴族のことはよく知らないが、きっと、大変に違いない。周りの人間は、相手が見た目の年齢とは全く異なるということを知らないのだろうから、見た目のままの対応を求められることになる。ギリア君が通訳にならなかったということは、きっと、彼に前世の記憶はないのだろうし、かなり絶望的だ。
「なんとか、なりませんか?」
私以上に貴族に詳しいであろうミーシャは、ギリア君のことを酷く心配している様子で、問いかけてきたので、私は用意していた答えを告げる。
「それが、一応、それを治すというか、緩和させるというかの薬もあるんだけど、実は、こっちも未完成なの」
「み、未完成……ちなみに、その薬を飲むと、どうなるんですか?」
「実験の結果、一応元の年齢の姿には戻れるものの、たまに、一時的に年を取った姿に変化するらしいよ」
「実験……」
何を思い出したのか知らないが、ブルリと震えるミーシャ。
(うん、言わない方が良いかな? 恐らく私は、人を相手に実験しているって)
人体実験は、普通は道徳に反するものとして扱われるが、どういうわけか、私はそれをしていたらしい。まぁ、それに関しては詳しく書かれていなかったため、どういう人物なのかまでは分からないが。
(多分、犯罪者で、処刑を控えてる人、とかかなぁ?)
ユミリアは公爵令嬢なわけだし、多少の無理はきくのだろう。もし、国が認めたことだったりしたら、ちょっと怖いなとは思うが。
「えっと、その副作用を完全になくすことはできますか?」
人体実験について考えていると、ミーシャからまた質問が飛んでくる。
「うん、それは、私が開発するしかないから何とも……でも、未完成だろうが、この薬を飲んでもらわないと、治せなくなるみたい。三日以内なら、これを飲めば一時的に治まるよ?」
私のために未完成の薬を、リスクを承知で飲んだというギリア君のために、私だって、できることはしてあげたい。
「お姉様なら、きっと、開発できるはずですっ。分かりました。すぐに、この話を通してみます。お姉様は薬の準備をお願いしても良いですか?」
「うん、分かった」
いつの間にか用意されている、一口大に切られた果物をミーシャに勧められた私は、それを頬張りながら、薬がどこにあるか探すのだった。
まぁ、薬が完成していたら、ユミリアちゃんがとっくに試してますわな。
それでは、また!