第二百三十七話 微睡みから覚めて
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よしっ、ユミリアちゃん帰還っ。
それでは、どうぞ!
『……ア、おね……から、めを……て……』
誰?
『あ……うえ……』
『……リ……ん』
『……ミリ……ま』
『ユ…………』
誰かが、何かを言っている声が聞こえる。それは、祈るように、ただただ切実な音色。それがいくつも聞こえる中、私は、何か大切なものをなくしてしまったような気持ちになりながら、ただ、唐突に思う。
(起きなきゃ……)
漠然としたその思いに引きずられ、私は、ゆっくり、ゆっくり覚醒していく。
『ユミリア……』
どこかで、誰かのそんな呟きが聞こえた。そう思った瞬間には、私は、そっと目を開いていた。
『っ、ユミリア! 良かったっ。成功したんだっ!』
『姉上っ』
『ふっ、う……良かった。ユミリアちゃんが目覚めてくれて、良かったっ』
『奥様、どうぞ、椅子におかけになってください。っ、お嬢様! 無事で、良かった!!』
『ユミリア……全く、心配ばかりかけて……』
『ユミリアっ、もうっ、今度から、もっと強い結界を開発するんだよっ!』
『ユミリアっ! 良かった!』
『ユミリア様……う、おぉぉおっ』
そこに居たのは、随分とカラフルな……と、いうか、日本人としてあり得ない色や顔立ちをした人達プラス一匹だった。もちろん、彼らが何を言っているのか分からない。
(えっ? 何? ドッキリ?)
眠る前のことを必死に思い出せば、華に頼まれてゲームを買い、家に戻ったところまでは思い出せたが……どうにも、その先が分からない。
(案外疲れて、寝落ちして……ドッキリ、にしては大がかりだから……夢?)
さっと部屋を見渡せば、全く見覚えのない部屋。恐らく、女性の部屋だと思われるここは、随分と広くて、ホテルのスイートルームとかはこんな感じなのだろうかと思える状態だ。
『ユミリアっ、大丈夫? 気分悪いとかはない?』
そんな中、向こうで号泣しているのとは別の、黒目黒髪な、非常に整った顔立ちで好みドストライクな男の子が私に話しかけてくる。
(日本語じゃないのはもちろんだけど、英語でもないよね……他の国の言葉なんて知らないよ!?)
私の夢だというのであれば、せめて、この美少年と話せるようにして欲しかったと嘆きながら、私は口を開く。
「これ、私の願望か何かが見せた幻かなぁ?
すっごく格好いい……」
『ユミリア……? えっと、それ、どこの国の言葉かな?』
ぼんやりと少年を見つめれば、彼はどこか困惑した様子で話しかけてくる。しかし、やはり、何を言っているのかちんぷんかんぷんだ。
「あ、やっぱり、通じないんだ。英語なら……いや、私、英語の成績はあまり良くないから無理か」
どうにかして、この美少年と会話をしてみたい。いや、もちろん、夢だということは良く分かっているのだけども。
『……ユミリア、僕の言葉、分かる?』
何かを話しかけてくれている少年には悪いが、全く言葉の意味が分からない私は、開き直って、この少年の顔をじっくり堪能することにする。
「うん、やっぱり格好いいっ」
良い夢だなぁと思っていると、何やら彼らは互いに話し合って、慌てたように何人かが出ていき、私は、少年とメイド服の女性、それと、でっかいモフモフとともに取り残された。
ふっふふー、ドSな心がとっても疼いた結果、こんな状況に♪
まだ、シリアスさんは撤退しませんよ?
それでは、また!