表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の生産ライフ  作者: 星宮歌
第二章 少女期 瘴気編
235/412

第二百三十四話 応えないユミリア(イルト視点)

ブックマークや感想をありがとうございます。


シリアスさん大活躍な今日この頃。


今回は、イルト君の切ない心情です。


それでは、どうぞ!

(また、何もできなかった……)



 ユミリアは、突如として降りかかった漆黒の剣に胸を貫かれて、意識を失った。ユミリアお手製の結界もあったはずなのに、それを易々と破って、ユミリアだけが攻撃された。僕は、ユミリアを庇って剣を受けたはずだったのに、ユミリアだけがダメージを負ったらしく、傷はないものの、未だに意識が戻らない。



「イルト、少しは休んでくれ」


「兄さん……僕は、僕は……」



 ユミリアが大好きで、ユミリアが大切で、何よりも守りたい人なのに、僕は傷つけてばかり。力を得ても、全く守れないまま。

 今だって、目の前で眠るユミリアに、僕は何もしてあげられない。



「イルトのせいじゃない。と言っても、納得できないのだろうな」



 困ったやつだと言いたげに苦笑する兄さんは、ベッドのサイドテーブルに食事を置いて、僕に食べるよう促す。



「食べたくない」


「……うーん、ユミリア嬢は、イルトが弱る姿なんて見たくないと思うけど……まぁ、仕方ないか。なら、この報告書を見せるわけにはいかないな」



 食べなければ、あの謎の剣に関する報告書を見せないぞと脅してきた兄さんに、僕はじとっとした視線を向けて……撤回する様子もなくこちらを見つめる姿に、折れた。

 味わうこともなく、飲み込むように、それでも、長年染み付いたテーブルマナーで行儀良く早食いを行えば、兄さんは苦笑したまま、食べ終わったと同時に報告書を渡してくる。

 ユミリアを貫いた剣は、ユミリアが意識を失うと同時に消えていた。だから、その正体が何かは分からなかったのだが、報告書を読み進めるに従って、僕の内心は荒れ狂った。



「瘴気なのに、魔王は関係ない? そんなわけないよね? ねぇ、兄さん。これ、どういうこと?」



 医療や呪いの専門家によって調べてもらっても原因不明。ミーシャ嬢が見たことで、初めてユミリアは瘴気の剣で貫かれたのだと判明。しかし、そこに魔王は一切関わっていないという内容を見せられ、僕は兄さんへと詰め寄る。



「報告の通りだ。事実、ミーシャ嬢の言葉によると、瘴気の質が異なるとのことだった。ユミリア嬢を襲った瘴気の方が、より濃厚で強烈な悪意を孕んでいると。そして……これは、ミーシャ嬢でも浄化できないと」



 そう、問題はそこだ。ミーシャ嬢の力であっても、ユミリアを襲った瘴気は浄化できない。そうなれば、ユミリアは悪意に呑まれ、自らの意思を失ってもおかしくはない。ただ、状況はそれよりもなお悪い。



「……ユミリアが、このままだなんて、認めない」



 そこに記されていたのは、ぼかしてはあるものの、ユミリアの死を示すものだった。



(そんなの、絶対に、認めないっ)



 しかし、それでも、僕にできることはない。いや、僕の呼び掛けが、僕の存在が、ユミリアを引き戻すかもしれないと言われて、何度も懸命に呼び掛けてはいるものの、それしかできない。



「ユミリア……早く、戻ってきて」



 戻ってきてくれるのであれば、僕はユミリアのどんな願いも叶えてみせよう。ユミリアが行きたいところ、見たいもの、欲しいもの、全て手に入れてみせる。だから、今は……。



「お願いだから、ユミリア……」



 呼び掛けることしかできない僕は、ユミリアの手を握って、何度も何度も、声をかけ続けるのだった。

可愛い子ほどいじめたくなる心理で、ユミリアちゃんもイルト君もいじめまくっておりますが……ちゃんと、ハッピーエンドにしますよ?


それでは、また!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ハッピーエンド教の方であることは存じ上げておりますよ?ええ、知ってますとも!……でもいぢめがなぁ…可愛い子には、病ませる程のいぢめをせねばならない病に罹っておられるセンセですしねぃ…PTA?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ