第二百三十三話 思い出したこと
ブックマークや感想をありがとうございます。
とりあえず、今日まではユミリアちゃん視点。
それでは、どうぞ！
いつも通りの道。いつも通りの街並みを眺めながら、私は良く利用するゲーム専門店へと足を運ぼうとして……何だか、無性に嫌な予感がして、別の店へと向かう。
（こっちに入るの初めてだけど、結構ゲームも揃ってるなぁ）
私が向かったのは、ゲームや本、CDやDVDなどが一緒に売られている大型の本屋さん。本屋さんとして利用することは多かったものの、ゲームをここで買った記憶はない。
華に聞いた通り、ゲームを買えば、思ったよりも厚さのある冊子がついてきて、これは、先に少しだけ読ませてもらおうと頬を綻ばせる。
「よしっ、読もうっ！」
家に着いた私は、早速、華の部屋にゲームだけ置いて、自室のベッドに寝そべって冊子を取り出す。華によれば、キャラクターの裏話が描かれているという冊子。どうやら、そこで描かれているのは、悪役である二人。ユミリア・リ・アルテナと、イルト・ラ・リーリスのことらしい。
「…………何だろう。すごく、違和感があるんだけど……」
今日は何だかおかしい。いつもの光景が懐かしく感じられて、このゲームのキャラクター達になぜか惹かれる。疑問に思いながらも、ページを捲って、中に書かれている内容を読んでいく。
「……私、これ、知ってる……」
そこで描かれていたのは、ユミリアの幼少期の出来事。母親が、父親の愛する人を呪っていたこと。そして、ユミリア自身のことも呪っていたこと。
そこに書かれているのは、文章だけのはずなのに、私の頭の中では、まるでそれを体験したことがあるかのようにフラッシュバックする。
（いや……違う。私は、これを本当に体験してる？）
ユミリア・リ・アルテナの記憶と、田中雪の記憶が混ざり合い、頭が酷く痛む。
（私は、何で……ユミリア？ 雪？ どっちが、私……？）
ズキンズキンと痛む中、冊子から手を離した私は、反動で捲られたページに釘付けとなる。
「あ…………」
それは、火傷する前のイルト・ラ・リーリスの顔を描いたページ。
「イルト、様……」
途端に、私は全てを思い出す。本来は、今日、ゲーム専門店へ向かって、通り魔に刺されたこと。ユミリア・リ・アルテナに転生したこと。イルト様の婚約者になったこと……。
「あ、う、ぁ……」
激しい頭痛に見舞われた私は、堪らず頭を抱える。
「ど、して……」
私は、日本に戻りたいとは思っていなかった。薄情かもしれないが、イルト様を心から愛していて、イルト様が居ない人生などあり得なかったのだから。
「わ、たし……」
それなのに、今、私は日本に居て、あの日のやり直しをしている。この状況がどういう状態なのか、私には全く理解できなかった。
「うっ……」
頭痛がピークに達した私は、いつの間にか、意識を失ってしまうのだった。
さてさて、ユミリアちゃんはイルト君の元に戻れるのか！？
それでは、また！
