第二百三十二話 違和感だらけの世界
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は……うん、定番なアレです。
それでは、どうぞ!
「んぅ……?」
ぼんやりとした頭で目を覚ました私は、一瞬、良く見知っているはずの家の天井が、なぜか懐かしいもののように見えて、少しだけ疑問に思いながらも起き上がる。
「お姉ちゃーんっ、早くしないと遅刻するよー?」
「えっ? わっ、もうこんな時間!?」
目覚まし時計を見れば、もうすでに八時に差し掛かっている。九時から大学が始まるということを考えれば、大急ぎで準備しなければならない。
ベッドから慌てて下りて、支度をしていると、ふいに、鏡に映った自分の姿が目に留まる。
(あれ……? 今、何か違和感が……?)
黒目黒髪の、平凡な日本人の顔。一応は綺麗系に属するらしい私は、本当に一瞬だが、強烈な違和感を抱いた。しかし、再び妹の声が響いて、遅刻すると思って手早く準備をすませる。
「お、お待たせっ」
「もうっ、本当だよっ。大学に遅れるかと思ったでしょっ!」
頬をぷっくり膨らませるのは、妹の華。私達は、一卵性の双子の姉妹であり、その顔立ちはとても良く似ている。
「ごめんごめん」
「とりあえず、今は早く行くよっ。走らないと、間に合わないっ」
そうして、華は私よりも先に走り出して、大学を目指す。私も、このままでは遅れることを十分理解しているため走るのだが……何だか、朝から違和感を感じることが多い。毎日顔を合わせてるはずの華も、見慣れたはずの町並みも、どこか懐かしく感じられる。
(……今は、とにかく大学だよねっ)
結果的に、大学には間に合ったし、忘れ物をすることもなく、がっつり講義を受けることができた。
「あっ、お姉ちゃんっ。ごめんけど、今日発売のゲーム、買っておいてくれない? ちょっと、サークルでの用事が入っちゃって……」
最後の講義が終わった後、私は、隣の席に座っていた華から話しかけられる。
「うん、良いよ? どんなタイトルのやつだっけ?」
「えっと、『モフモフとゆく、恋の花』ってやつ。初日に買ったら、キャラクターの裏話を収録した冊子がもらえるって書いてあって、今回はどーしても欲しいのっ」
『モフモフとゆく、恋の花』というタイトルを聞いて、私は強烈な既視感を覚える。
(この、やり取り……覚えがあるような……?)
「後でお金は払うから、お願いっ」
「う、うん、分かった……。ところで、そのゲームの攻略対象者って、誰が居たっけ?」
「あれ? お姉ちゃんも、原作の本は読んでなかったっけ?」
「うん、読んではいたんだけど、ちょっと度忘れしちゃってて」
なぜか、今、これを聞いておかなければならないという気持ちになっていた私は、そんな言い訳をして、華からその情報を聞き出す。
「えっとね、まずは正統派な王子様、アルト・ラ・リーリスでしょ? あと、騎士団長の息子で脳筋枠のハイル・ル・フィアス、魔法省長官の息子で、参謀枠なティト・ル・ミルテナ、あと、悪役令嬢の兄のディラン・リ・アルテナ、最後に、隠れキャラで――――」
それを聞いた私は、華にお礼を言って、言われた通り、ゲームを買いに自宅近くのゲーム専門店へと足を運ぶのだった。
何気に名前初登場な華ちゃん。
ちなみに、ユミリアちゃんの前世の名前は、田中雪ちゃんです。
最後の攻略対象者?
そんなの、読者様にはまだまだ明かすわけないじゃないですかー。
ザ・引き延ばし、です♪
それでは、また!