表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の生産ライフ  作者: 星宮歌
第二章 少女期 瘴気編
221/412

第二百二十話 大魔王は形無し

ブックマークや感想をありがとうございます。


いや、最初は、『大魔王降臨』とかってタイトルにしようと思ったんですけど……ま、まぁ、読めば分かります。


それでは、どうぞ!

 転移で向かったのは、もちろんアルテナ公爵家。昔は、転移で移動できるのは『コツ生』で転移ポイントになっていた場所のみだったのだが、今は、自分でポイントを作ることに成功して、ある程度色々な場所を登録している状態だ。

 アルテナ公爵家の私の部屋。そこへ着いたと思って目を開けた途端……。



「ユミリア」



 ゾワリとするほどに、色気を含んだ声。そこに居たのは、黒目黒髪に黒の獣つきなイルト様。ただ、イルト様はにっこり微笑んでいるはずなのに、背後のオーラがものすごく、怖い。



「た、ただいま帰りました」


「うん、そうだね? ようやく、帰ってきたね?」



 この際、何でイルト様が私の部屋に居るのかなどどうでも良い。どうにかして、この場から逃げなければ危険だと、本能が告げている。



「もう、逃げたらダメだよ? でないと…………ふふっ」



 イルト様の危険な笑みで、私には逃げるという選択肢が絶たれた。ちなみに、手の中の魔王は、イルト様の圧にブルブル震え、ミルラスはガッチガチに固まって動かない。こんな状況の二人に助けを求められるわけもなく、私はゆっくり息を吸って、イルト様を真正面から見つめる。



「イルト様。ユミリア・リ・アルテナは、ただいま帰りました。勝手に居なくなって、すみませんでした。ご心配をおかけして、すみませんでした」



 何に対して怒っているのか、心当たりがありすぎて、どれか分からない。だからこそ、私には、とにかく謝ることしかできなかった。



「連絡もせずに、すみません。何も言わないままで、すみません。えっと、あとは、えっと……」


「もう良いよ。ユミリア」



 そんな声に頭を上げると……イルト様の顔は笑っているはずなのに、目は、全く笑っていなかった。



「ユミリアは、根本的なことを分かってない」



 あまりにも危険な光を宿すイルト様の瞳。しかし、ここで退くわけにはいかない。



「根本的なこと、ですか?」


「そう、僕が、どんな思いで、ユミリアを待ち続けたのかを、ね?」



 イルト様には現在瘴気は残っていないはずなのに、今、イルト様の背後が黒く揺らいだ気がした。



「ねぇ、ユミリア。僕はどうしたら良いのかな? ユミリアを逃がさないためには、どんな枷が必要なのかな?」



 その瞳が、暗く、昏く、光を失う中、私は、唐突に、それに気づく。



(あぁ、そうか……イルト様は、きっと……)


「……寂しい思いをさせて、ごめんなさい。私もっ、イルト様に会えなくて、寂しかった!」



 私は、躊躇いなくイルト様の胸に飛び込む。

 その際、手の中にあったものを投げてしまい、小さな悲鳴が聞こえたような気もするが、とにかくぎゅうぎゅうと抱きついて、久々のイルト様を堪能する。



「ユ、ユミリア!? ちょっ、まっ! 理性がっ! ぐ、ぅ……」



 ギュムギュムスリスリ、ときたまペロリとすれば、イルト様はなぜか真っ赤になって黙り込む。ただし、私はまだまだイルト様不足だ。せっかく、私の部屋に来てくれていることでもあるし、ちょっとだけこの部屋の時間の流れを遅くして、イルト様を丸一日くらい堪能してもバチは当たらないはずだ。


 後に、ミルラスはこう証言する。



『う、む……あれは、王子が可哀想だったのじゃ。最初は恐ろしい男だと思っておったが……主様の前だと、羞恥心で意識を朦朧とさせておったよ』



 そんなことなど知らない私は、とにかくイルト様を堪能すべく、イルト様の首元で大きく深呼吸して、頬に口づけを落とした。

イルト君は、やっぱりユミリアちゃんに弱いですなっ!


ユミリアちゃん、何となくで危機回避成功ですっ。


それでは、また!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「ちゅうぅぅう?!」←恐怖でガッチガチに固まった体が宙に舞ったネズミ(笑) ちっさいネズミさんは踏み潰しそうになるので広い空間に放す時はボールの中にいれてから放してね!ネズミが動く度に転が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ