第百九十四話 クリスタルロード攻略5(メリー視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
今日はひな祭り~。
と、いうわけで、ちょろっと番外編でおふざけ回を同時投稿しておりますので、よかったら読んでみてください。
それでは、どうぞ!
その瞬間、空気が変わった。全身が総毛立ち、頭の中で警鐘が鳴り響く。『アレ』は危険だと。早く、逃げなければと。
しかし、その本能を、私は意思の力だけでねじ曲げる。
(ユミリアお嬢様のために、退くわけにはいかないっ)
そう考えるのは、何も私だけではない。異変を察知してすぐにこちらまで降りてきたセイ殿も、いつもだらしのない物言いをしているローランも、最近は愛玩動物としてしか見れなくなってきているコウ様も、警戒をしながら、竜をにらみ返している。そして、イルト殿下はといえば……竜の殺気に対抗すべく、殺気を放っている。
(私も、見習わなければっ)
イルト殿下の対応に感心した私は、イルト殿下を見習って殺気を放とうとしたところで……。
「まてまてまてっ、真似すんなっ。ていうか、あれ、多分動けねぇからっ!」
ローランに止められて、その視線の先を辿った結果、その真意を理解する。
(確かに、ミーシャ様にはつらいでしょうね)
一応、セイ殿に結界で守られてはいるものの、それでも完全にこの殺気の応酬を防げてはいないのだろう。気絶したままでありながら、ミーシャ様はうなされているようだった。
「動かないという根拠は?」
持続性のある光魔法であったおかげで、ミーシャ様が気絶した今も、竜の頭はしっかりと見えている。そして、その目が敵意をふんだんにはらんでいる様子も見てとれた。
「あぁ、そりゃあ……あの竜は、本当に首だけみたいだからな」
「……はい?」
そう言われてよくよく見てみると、確かに、胴体は確認できない。しかし、それは水晶に覆われて見えなくなっているだけではないのかとも思え、ついローランへ視線を投げる。
「あの竜の目、白く濁ってるだろ? 竜は、首を落とされても、魔力がある限りは生きていられる生き物だ。んで、首を落とされたら、そいつの目は白く濁るんだ」
改めて竜の目を見てみると、確かに、その竜の目は白く濁っていた。
「だから、あいつは絶対に動けねぇよ。……そんでよぉ、なんで、そんなに敵意をぶつけてくるのか、聞かせてくんねぇか?」
前半は私に向けた言葉。後半は、竜に向けた言葉なのだろう。竜の知能は高く、会話をすることも可能だと聞くが、果たして、首だけになった竜も同じなのだろうかと考えながら待つと、頭の中に、随分と重厚な声が響く。
《ふんっ、若造が偉そうに。敵意の理由だと? そんなもの、我をこの状態のまま放置している人間が憎いからに決まっておるっ》
そして、その声から得られた真っ当な理由に……セイ殿をはじめとした全員が、胡乱げな視線を向けたのだった。
竜、喋れたんですねぇ。
そして、ここから始まる竜の心をポッキリ折ろう大作戦!(←おいっ)
それでは、また!