第百八十三話 とある女王の不幸1(三人称視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は……いやぁ、どうしても、書いてみたくなって、とある女王の悲劇(不幸)を描いて参りますっ。
それでは、どうぞ!
夢を司る魔物が集う楽園、夢魔の森。そこは、人間達の間で、一度立ち入れば二度と出ることは叶わないと言われる場所で、事実、今日に至るまで、それは真実だった。
……そう、全ては今日、この日に、ひっくり返された。
「ひゃははははははっ、ひゃめっ、ひゃめるのじゃっ、ひきゅっ、ひゃははははははっ」
「やだ。今、私は虫の居所が悪いから、さっさと吐いて?」
「みゅりっ、むりなのじゃっ、ひゃあぁっ」
夢魔の森中心地。そこは、夢魔の女王が暮らす大樹が根を下ろす場所。人の女性、それも、かなりナイスバディな女性の姿を取る夢魔の女王は、その日も、のんびりと日光浴でもして、下級の夢魔達から献上される人間を弄ぶ予定だった。下級、中級の夢魔を侍らせて、悠々自適なスローライフ。それは、これから先もずっと、変わらないはずの日常だった……のだが、今日は、そこに黒い少女というエッセンスが加わった。
「ん? そこな者。迷子かえ?」
フカフカのクッションを敷き詰めた巨大な木の虚。そこでのんびりと横たわっていた紫の髪と緑の瞳を持つ女王は、少女を見つけてニタリと笑う。
人間の中でも、弱いと判断された者は、稀に、女王の余興のために、この場所へと寄越されることがあった。女王は、今日もその類いだろうと、心を躍らせる。
「みゅ?」
少女が鳴いたその瞬間、なぜか、大気が蠢いた気がして、女王はピクリと眉を上げる。しかし、すぐに少女がまだあどけない、胸すらも発達していない子供だと気づき、余裕の笑みを浮かべる。
「可哀想にのぉ。ここは、夢魔の森。ここに来る人間は、一人たりとも元の場所へ戻ること、叶わなんだ」
子供ならば、この場所に来る間、不安で不安で仕方なかったはずだ。そこに、このような言葉を投げかけられれば、さらに不安を煽るに違いない。女王は、少女が涙を浮かべる様子を思い浮かべ、さらに笑みを深くする。しかし……少女の反応は予想外なものだった。
「ふふふっ、みぃつけたっ」
ニタァとした笑みを浮かべる少女に、長らく機能しなかった本能からの警鐘が、女王の中で鳴り響く。その事実に、女王は即座にその場を離脱しようと判断したが……それは、今一歩遅かった。
逃げようと身動きした瞬間、隣にいた中級夢魔の首が飛んだ。そして、そのまま間髪を入れずに、女王の体が虚の壁まで吹き飛ばされる。
「あぐっ」
「ふふふっ、大丈夫。すぐには殺さない。情報はできるだけほしいから、ね?」
体を動かすこともできないくらい、強い衝撃を受けた女王は、少女のハイライトが消えた目を見て恐れ戦く。
そうして、現在、女王は、磔にされた上で、少女が投げかける問いに答えるまで、くすぐられるという地獄を味わっていた。
シリーズなのか、コメディなのか、判断に迷う展開……。
それでは、また!