第百七十八話 処分(イルト視点)
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さてさて、今回もシリアスさんが踊りますよ~。
それでは、どうぞ!
(なんて、情けない……)
そう思ってしまうのは、瘴気によって、またしても暴走してしまったからだ。ちゃんと、定期的にユミリアかミーシャ嬢から浄化魔法を施してもらっていたというのに、この有り様だ。しかも、なぜか僕だけではなく、セイ達も瘴気に呑まれていたらしく、結果、国が滅んでもおかしくない状態にまで発展していた。
「なるほど、事情は分かった」
ユミリアが突如として消えたこと、そして、その行き先に関する手がかりがないことで暴走してしまったことを、まともに話せないほどに消耗した僕の代わりに、セイ達が説明してくれた。重々しい声でうなずく父上は、少しだけ僕に視線を移した後、すぐに兄さんの方へ視線を向ける。
「アルト。騎士達は、避難のために退避させたのだったな?」
「はい」
「ならば、動けるようになり次第、彼らを引き戻すようにせよ。そして、ユミリア嬢の捜索を行うように」
「分かりました」
淡々と応える兄さんに、僕は、視線を向けることができない。過去と今とで、二度も、僕は兄さんに攻撃を仕掛けている。本来ならば、何らかの罰を受けてもおかしくない状況であるにもかかわらず、初めて瘴気に呑まれた日も、そして、恐らくは今回も、罰らしい罰を与えられてはいない。
「セイ殿達は、瘴気に呑まれた原因究明を、ミーシャ嬢とともに行うように」
「分かったよ」
父上は、僕以外の、この場に居る全員に命令を下した。そして……。
「イルト」
とうとう、僕の名前が呼ばれる。
「は、い……」
緊張で震えそうになりながらも、掠れた声でどうにか返事をする。
「お前は、部屋でゆっくり休むように」
「っ……分かり、ましたっ」
恐らくは、謹慎処分ということなのだろう。実際のところ、僕は何がなんでもユミリアを探しに行きたい気持ちがある。しかし、僕が捜索隊に加わるのは、父上としては避けたいのだろう。いつ、また瘴気に呑まれるかもしれない地雷を抱えながらの捜索など、誰もしたくないに違いない。
(でも……罰としては、軽すぎる……)
次期国王を……いや、それだけでなく、場合によっては国王陛下自身まで害そうとした僕は、もっと重い罰であるべきなのだ。だから、僕は、余計に兄さんへ視線を合わせることができずにうつむいてしまう。
「では、動ける者から動くように」
そんな父上の指示をぼんやりと聞いていた私は、全く力の入らない体のまま、精神的な負荷もあって、一時間近く、動けないのだった。
イルト君、かなりショックだったっぽいですなぁ。
アルト君へ攻撃してしまったことと、ユミリアちゃんがいなくなったことで、ダブルパンチです。
それでは、また!