第十六話 友達
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瀕死のフェンリルとドン引きのセイ。
さぁ、ここからユミリアちゃんはどう動く?
それでは、どうぞ!
『う、うわぁ……』
泡を吹いて、ビクビクと痙攣を繰り返すフェンリルを前に、セイはまたしても頬を引きつらせて声をあげる。
(……うん、やり過ぎ、た?)
とりあえず、新しく魔石を取り出して、ヒールを発動させる。今やるべきことは、フェンリルの回復だ。そうしなければ、フェンリルの説得もままならない。
「おちりゅにょっ(起きるのっ)」
ペチペチとフェンリルの鼻を叩けば、苦しそうに『グルゥ』と声をあげて……パチリ、と目を開ける。
「やっちょおちちゃにょ(やっと起きたの)」
「グガッ」
そして、目を開けた瞬間、フェンリルは私に襲いかかろうとして……。
「あいちゅはん(アイスハン)「きゅーんっ、きゅーんっ、くーんっ!!」……わかりぇばよろちいっ(分かればよろしいっ)」
一瞬にして降伏ポーズに変わったフェンリルは、耳をペタリと横にして、ブルブルと震える。
『……人間の子供って、こんなに怖かったんだな……』
後ろでセイが震えているが、今、私がやるべきことは、フェンリルの説得だ。そう、説得なのだ。
「ふぇんりる、にゃんであばりぇてちゃにょ? (フェンリル、何で暴れてたの?)」
「きゅーん……妖精達が、ぼくのこと、悪くいうから、イライラしてた」
フェンリルは、震える声で、人間の言葉を話す。『コツ生』でも、言葉を話すような描写はあったが、暴れている原因までは知らなかった。ただ、鼻が弱点だということを知っていただけで……『コツ生』で倒したのと同じ方法で、フェンリルを追い詰めただけなのだ。
「よーちぇー? (妖精?)」
「……ぼく、ぼく、異端のフェンリルだから、妖精達、警戒した。それで、ぼくを追い出そうと、いっぱい悪口言う……」
『異端』という言葉に、よくよくフェンリルの姿を観察してみれば、本来青いはずの目が、片目だけ赤かった。オッドアイのフェンリルさんだ。
「ぼくの目、こんなだから……属性も、炎を使えておかしいから、群れからも受け入れてもらえない。居場所を探して、暴れて、でも、どこにもない」
「みゅう、あばりぇちゃりゃ、いみにゃいにょ(みゅう、暴れたら、意味ないの)」
「それは、分かってる、けど……」
ズーンと落ち込むフェンリルを見て、私はふむ、と考える。
「にゃら、わちゃしとともだちににゃりゅにょっ(なら、私と友達になるのっ)」
「友、達?」
「みゅっ」
笑顔で大きくうなずけば、フェンリルは感激したかのように、ブルリと震える。そして……。
「友達など畏れ多いっ! 下僕にしてくださいっ!」
予想外の反応に、硬直してしまうのだった。
……まぁ、フェンリルの気持ちを考えれば、当然の答え(下僕発言)でしたね。
ユミリアちゃん、大混乱になりそうです(笑)
さてと、台風が近づいてきていますので、影響のありそうな方はお気をつけて~(特に超大型らしいですし)
それでは、また!