第百六十一話 ポック病
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今回は……うん、完全に、シリアスさんの登場かも?
それでは、どうぞ!
「ポック病、ね……」
「はい。……あの、何かありましたか?」
とりあえずは、迎えに来てくれたメリーとともに、私は屋敷に帰ることにした。それには当然のごとく、イルト様も、アルト様も、ミーシャも三人組も着いてきた。そして現在、私達はメリーにユーリックの病気について話を聞いていた。
「ユミリア様、これは……」
私と同じことに気づいたローランは、険しい顔をしている。ただ、当然のことながら、メリーも含めたその他のメンバーには、なぜ、私達がそんな表情をするのか分からないといった様子だった。
「まず、前提を話すと、ポック病っていうのは、普通は重症化する病気じゃありません」
「そうなのですか? ですが、ユーリックは実際、辛そうでしたが……?」
「ユミリア、普通は、ということは、何らかの方法で重症化することもある、ということ?」
そう問いかけるイルト様に、私はうなずく。
「ある二種類の植物が、それぞれ発病の誘発と、重症化を促す作用を持っていて、自然ではこの二つを同時に、しかも、長期に渡って口にすることはない、と言えば、どういうことか分かるでしょう?」
「なっ……」
ユーリックは、誰かに殺されかけていた。その事実を知って、メリーは絶句する。
「それと、もう一つ。これは、メリーに関することなんだけど……話しても良いかな?」
「は、はい。何か、大切なこと、なのですよね?」
「うん、かなり重要なこと」
「では、お願いします」
何を話すのかを知らないはずなのに、メリーは私を信頼してくれる。だから、私は、できるだけ手短に、それを話すことにした。
「昔、メリーが視力を失って死にかけた病。あれも、ポック病だったの」
「あの、時の……」
私やローランは、当時をよく知っている。メリーも本人であるために同じく。そして、当時を知らない他の面々達は、詳しい話を知らないながらも、メリーとその息子が、同じ手口で殺されそうになったという事実を認識する。
「けど、ユミリア様。あの時の犯人は、メイドの一人ってことで判明して、この屋敷から追放した後に、罪人としてつき出してるはずだろ?」
実はあの時、犯人は簡単に見つけられたらしい。そして、その証拠とその他の犯罪歴を突きつけ、風の噂で処刑されたという話も聞いている。
「私には事後報告だったけどね?」
「うっ……け、けど、ユミリア様はまだ幼かったし、こういうのは大人の俺達の役割だと思って……」
「責めてるわけじゃないよ。ちゃんと、そこまで手を回してくれたことには感謝してるから」
そう言いながらも、私はメリーへと視線を向ける。
「メリー。きっと、犯人は他にも居たのだと思う。取り逃がしてしまって、ごめんなさい」
「っ、ユミリアお嬢様のせいではありませんっ! どうか、頭をお上げくださいっ!」
「俺も、すまない。あれで捕まえた気になってた俺達が、一番悪い。ユミリア様はまだ幼く、行動範囲も……狭かった、と、思う……? い、いや、ともかく、二歳にもなってない子供に責任を押しつけるなんてのはありえないっ! すまなかった!」
『二歳にもなってない』の行で、イルト様達が驚いた気配はしたものの、私とローランは一緒に謝り倒し、互いを庇い続けて……。
「お願いします。もう、もうっ……勘弁してくださいぃ」
そんなメリーの弱りきった声で、ようやく顔を上げた。
メリーが死にかけたあの事件がまた、今回関わってくることになりそうですなぁ。
それでは、また!