第百六十話 送り込まれたのは……
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は……ちょろっとシリアスさんが顔を覗かせつつあるかも?
それでは、どうぞ!
「つまりは、お父様が私を心配して、私に内緒でローランを送り込んだ可能性が高い、と」
「あぁ、そうだろうな……俺は、てっきりユミリア様は知ってるものだと……」
ローランは、お父様から私の護衛につくよう言われて、教師としてやって来たのだと言う。本来、『モフ恋』ではどんな教師だっただろうかと考えて……あまり思い出せないため、恐らくはモブだったのだろうと思考を放棄する。
現在、自己紹介やら学園の説明やらが終わって、放課後。チャイムが鳴ると同時に、一斉に教室を出ていくクラスメイトを眺めた後、私達はローランとその場で話をしていた。ちなみに、あの気絶したご令息は、友人と思われるご令息に俵のように担がれて去っていった。
「あー、こりゃあ、セイ達も似たような状況なんじゃねぇかな?」
「……ローラン? まさか、セイ達も来てるの?」
ため息混じりに告げられた言葉へ敏感に反応すれば、ローランは『やっぱりか』と言いたげな表情でうなずく。
「セイは保健医として、鋼は、番犬? んでもって、メリーは、ユミリア様のメイド兼諜報としてこの学園に来てるぞ?」
そう言い終えた直後だった。教室の扉が開き、見慣れた青い瞳のメリーがそこに居た。
「ユミリアお嬢様。お迎えに上がりました」
ニコニコとそこに存在するメリーだったが、本来、メリーは付いてくる予定ではなかった。その理由は……。
「メリー!? ダメでしょうっ、ユーリ君が病気になっていたのでしょう?」
メリーには、私と同じ年の子供が居る。彼の名前はユーリックで、普段からやんちゃなのだが、何やら重い病気にかかったとのことで、メリーはしばらく実家に帰っていたのだ。
「ユミリアお嬢様にいただいたお薬を飲ませたところ、普段以上に元気になりましたので、もう大丈夫です。薬を、ありがとうございました。これからは、もっとユミリアお嬢様のために働く所存です」
効くかどうかは分からないが、一応、メリーには万能薬を持たせて送り出しておいた。そして、どうやらそれはてきめんに効果を発揮したらしく、メリー曰く、ユーリックはいつも以上に体が軽くなったと喜んでいるらしい。
(ん? いつも以上に……?)
万能薬には、状態異常を治す効果しかない。落ちた体力は戻らないし、いつもよりも元気になるということはあり得ない。
(……うん、まぁ、大袈裟に言ってるだけかもしれない、けど……)
どうにも引っかかる。
そうして黙っている私に、隣で様子を窺っていたイルト様が、そっとその手を私の手に重ねてくる。
「ユミリア、何が心配? 言ってごらん?」
イルト様の優しい視線に促されて、私は、自分の中に生まれた小さな疑念を漏らすのだった。
チラチラと見え隠れするシリアスさん。
事件の匂いですよ~。
それでは、また!