第十四話 試練
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さぁ、やって参りました。
不審者との対面っ(←違う)
それでは、どうぞ!
「わちゃしにょにゃまえは、ゆみりあでちゅっ(私の名前は、ユミリアですっ)」
『ふーん? それで、愛し子が何の用? ここは危険だって聞かなかったの?』
金色に光る半透明な羽を出して、その妖精は私をじっと見る。
「みゅっ、きいちゃにょ。でも、しぇいはわるくないにょっ(みゅっ、聞いたの。でも、セイは悪くないのっ)」
『……僕の名前を知ってる理由は?』
「……しっちぇるかりゃ、しっちぇるにょ(……知ってるから、知ってるの)」
不信感をあらわにこちらを警戒する妖精、セイに、私はとりあえずそう答える。何せ、最初に出会った妖精達も、彼の名前を呼ぶことはなかった。呼んだのは、彼の異名。『デストロイヤー』だけだった。しかし、私は知っている。彼の名前はセイなのだと。常に不機嫌そうにしながらも、試練を課しては報酬に様々な素材を授けてくれるキャラクターだと。……ついでに、ツンデレだとも。
『答えになってないよ。……で、本当に、何の用?』
「よーちぇーにょまりょくちゅいがほちいにょっ(妖精の魔力水がほしいのっ)」
ぴょこんっと手を上げて告げると、何やらセイの視線はますます厳しいものとなる。
『そんなもの、何に使うつもり?』
「めりーをたしゅけちゃいにょ。だかりゃ、ばんにょうやくにょざいりょうをあちゅめてるにょ(メリーを助けたいの。だから、万能薬の材料を集めてるの)」
しーん、と、長い沈黙が訪れる。私はセイを、セイは私をじっと見る。幼児と妖精の見つめ合い。しかしそれは、妖精の、セイのため息で終わりを告げる。
『なら、僕の試練を受けるんだね。それに合格すれば、譲ってやるよ』
「ほんちょ!? (ほんと!?)」
『うん、本当。じゃあ、試練を言うけど、覚悟は良い?』
「みゅっ!」
またしてもぴょこんっと手を上げて返事をすれば、セイはニヤリと笑う。
『そう。なら、遠慮なく。試練は単純だ。この森を荒らすフェンリルをどうにかして、暴れないようにすることだ。討伐するもよし、説得するもよし』
「みゅ、ふぇんりる? (みゅ、フェンリル?)」
セイからの試練は、てっきり『~の素材を取ってくること』という類いのものだと思っていたのだが、どうやら違うらしい。と、いうか、これは、確かかなり高位の素材集めの時に出される試練ではないだろうかと、私は首をかしげる。
『ほら、どうしたの? できないなら、帰ると良いよ』
「みゅっ、でちりゅにょっ。いっちぇくりゅにょ(みゅっ、できるのっ。行ってくるの)」
セイの言う通り、フェンリルは討伐しても説得しても良い。ただし、それには確実に戦闘が伴う。よほどの実力がなければ、ゲームオーバーになってしまうのだ。
『ふ、ふーん、な、なら、さっさと行けば?』
何だか戸惑った様子のセイに、やはりゲームとは反応が違うなと感じながらも、『みゅっ』と返事をして踵を返す。目指すは、フェンリルが居そうな場所。残念ながら、フェンリルの位置は一定ではないため、一直線には向かえないのだ。せいぜい、サーチで探すくらいのことしかできない。
そうして、私は再び森の奥へと入るのだった。
ツンデレ妖精セイ君の試練。
ユミリアちゃんは無事、達成することができるのか!?
それでは、また!