第百四十七話 だいすきなおとうと(アルト視点)
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さてさて、前回に引き続き、アルト君視点。
んでもって、シリアスさんがわりと力を発揮?
それでは、どうぞ!
イルトが目覚めたと聞いて、私はすぐにイルトが居る部屋を訪れた。そして、扉を開けた瞬間、どうやら私が一番乗りだったのだと気づきながら、大切な弟へと声をかける。
「イルト!」
「? にいさん?」
イルトが、ベッドから起き上がっている。余命がどうと言われたものの、今見る限り、イルトは元気そうだった。
「だいじょうぶか? どこか、いたいところはないか? たぶん、もうちょっとしたら、じいがくるからな?」
ベッドの上で座っているイルトへと、私は熱心に話しかける。しかし……。
「うるさい」
「……え?」
「うるさい。そんなことどうでもいいから、さっさとあっちにいって。あぁ、でも、ユミリアにはあいたいな。ねぇ、ユミリアをよんできてよ」
いつものイルトであれば、困ったような表情をしながらも、自分の状態を伝えるくらいはしてくれるはずで、そこには確かな優しさが存在しているはずだった。しかし、今、目の前にいるイルトの口から飛び出したのは、あまりにも辛辣な言葉。
「イル、ト……」
「ねぇ、きこえなかった? さっさとでていけっていったんだけど?」
顔を歪めて、敵意を向けてくるイルト。そんなイルトの表情を、私は見たことがなくて、狼狽えることしかできない。
「それともなに? にいさんもユミリアのことがすきなの? でも、ユミリアはぜったいに、だれにもあげないよ。ユミリアは、ぼくだけの、たいせつな、たいせつなこんやくしゃなんだから。もし、ユミリアをとろうとするなら、ぼくはどんなてをつかってでも、にいさんをおいつめるよ?」
真っ暗な目で、息が詰まるほどの殺意を載せた言葉を放つイルトは、私が知るイルトではあり得ない。いや、確かに、イルトはユミリア嬢のことを溺愛している節はあった。しかし、ここまで暗いイルトを、私は知らない。
「イ……ル、ト……?」
「あぁ、でも、にいさんはいちばんのてきかもしれないよね? じゃあ、やっぱり、にいさんをユミリアにちかづけるなんてできないなぁ。ううん、それいじょうに、ユミリアがほかのおとことはなすなんて、がまんできない。ねぇ、きえてくれない? にいさん?」
どうして、こんな状態になっているのか、私には理解できなかった。ただ、分かるのは、目の前で、イルトが禍々しい魔力を練っているということ、魔石もないのに、その魔法が発動しそうだということ、そして……その対象が、私だということだった。
「ぁ……」
ガクガクと震えるせいで、喘ぐようにしか言葉が出ない。
そうして、実体化した真っ黒な魔力の塊が私へと直進してきて……盛大な、爆発音が響き渡った。
『あの、可愛かったイルト君が、イルト君がぁぁぁあっ!!』という嘆きが、どこからか聞こえてきそうな今日この頃。
もちろん、『アルト君!?』っていう声もありそうですけどね。
さぁ、事態はとっても深刻。
シリアスさんが全力でアクロバティックな動きを披露しております。
それでは、また!