第百三十九話 目覚めないイルト王子
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たとえバリケードを張ったとしても、シリアスさんはそれをぶち破って踊り狂っております。
うーん、シリアスさんの退場はちょっと遠いかも?
それでは、どうぞ!
アルト王子からは、イルト王子が私への贈り物が台無しになってしまったことで落ち込んでいたという情報を新たに得ただけで、それ以上の情報はなかった。
(あの時見た箱は、贈り物だったんだ……)
きっと、側妃様の登場によるゴタゴタで、破損してしまったのだろう。
(でも、だとしても、やっぱり分からない。どうして、こんなに体温が下がるの?)
私は、全ての魔法を扱える。だから、解毒魔法は全て試したし、呪術の可能性も全て潰した。何らかの病の可能性を考えて、病を発見するための魔法も行使したが、どこにも病は見当たらない。怪我すらも存在しない。
「イルト様っ、イルト様っ!」
打てる手は全て打った。にもかかわらず、イルト王子の体温は低いまま、目を醒ます気配もない。
「イルト……」
せめて、外側から温めようと、ヒートの魔法でイルト王子を温め、手もしっかりとさする。
(どうしてっ。いったい、何がっ)
何をしても効果のない状況に、私は必死に記憶を漁るものの、やはり、今のイルト王子の状態に該当する情報はない。
「お願いです。目を、目を、開けてくださいっ」
私とアルト王子は、必死に、イルト王子へと呼び掛け続けた。そうすれば、イルト王子が目覚めてくれる気がして、必死に、必死に……。
しかし、その日、イルト王子が目覚めることはなかった。
「っ、そうだっ、セイっ、セイ達なら、何か知ってることがあるんじゃあっ」
さすがに外が暗くなり、公爵家へと戻された私は、今までなぜか連絡を寄越さなかったセイ達のことを思い出す。
セイ達には、私と連絡を取るための通信機を渡している。だから、今すぐにでも、話すことはできるはずだった。
「セイっ、ローランっ、聞こえる?」
今日は、セイとローランの二人がイルト王子の側に付いていてくれているはずだ。鋼に関しては、今日はほとんどずっと、屋敷でお留守番だった。
『……うっ、ユミリア?』
『ユミリア、様?』
ただ、通信機として使っている腕輪から聞こえてきたその声は、随分と弱々しい。
「セイ? ローラン? 今、どこに居るの? ……何が、あったの?」
現在、お父様は城に泊まり込みとなっており、お継母様は屋敷の管理を、使用人達はそれに伴って忙しく動いており、私の様子に注意を払う者は、鋼しか居ない。そんな鋼も、セイ達の声に不安を抱いたらしく、耳をピクピクさせている。
『多分、ここ、妖精の森? でも、僕達、第二王子の護衛をしてたはずだけど……』
『悪い、ユミリア様。どうやら俺達は、いつの間にか気絶させられていたみたいだ』
そんな二人の言葉に、私と鋼は顔を見合わせて、すぐに、妖精の森への転移を発動させた。
セイ達に、いったい何が……?
この二人、とんでもなく強いはずなんですけどねぇ。
それでは、また!