第百三十一話 白黒兄弟5
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さてさて、ようやくあの時の女性の正体が判明っ。
それでは、どうぞ!
イルト王子と離れて、私達は、少しの間、応接室へ立ち寄って腰掛ける。
「イルトは、きっとすぐにもどってくるけど、そのあいだに、あのときのこえのぬしのはなしをしておいてもいいか?」
「はい、私も、それをお聞きしたかったところです」
あの、イルト王子を散々に貶していた女性が何者なのか、アルト王子から話してもらえるというのであれば、ぜひとも聞いておきたいところだ。
私の言葉に、アルト王子はうなずくと、徐に口を開く。
「かのじょのなまえは、スーリャ・ラ・リーリス。イルトの、うみのおや、だ」
「っ、側妃様!?」
イルト王子の母親といえば、側妃様しかいない。つまりは、イルト王子は、自身の母親から、あんな言葉を投げ掛けられていたということだ。
「わたしのははうえは、ティアルーンこくからきているから、イルトのことをさげすんだりはしない。でも、イルトのははうえであるスーリャさまは、このくにのきぞくだ。とうぜん、くろにたいして、いいかんじょうはもっていない」
ティアルーン国は、黒を崇める国。対して、リーリス国は黒を蔑む国。お互いがお互いに信じるものが異なるこの国同士は仲が悪く、それでも、隣国同士、手を取り合わなければ生き残れない状況が、ちょうど王妃様が生まれた頃にあったのだそうだ。元々、権力の集中を防ぐため、王妃は外国からもらうことが義務づけられたリーリス国の王室は、王妃様との婚約によって、ティアルーン国との繋がりを得ることとなる。
しかし、王妃様と婚姻した直後、リーリス国では側妃を推す声が高まり、陛下は国内の高位貴族令嬢であったスーリャ様を側妃として選んだ。王妃様だけでなく、スーリャ様に子供ができれば、王位継承権を巡る争いが起こるに違いないという状況下、陛下は何を思ったのか、王妃様もスーリャ様も妊娠させ、二人の王子を誕生させた。王妃様の子が、アルト王子。スーリャ様の子が、イルト王子。そして、スーリャ様は、イルト王子が黒目黒髪だったがために、危うい立場となった。
「スーリャさまは、『イルトさえいなければ』って、よくはなしている。でも、くろだとか、そんなのかんけいない。イルトは、とってもゆーしゅーなんだっ。わたしなんかよりも、ずっと、ずっと、すごいんだっ」
スーリャ様は、恐らく、イルト王子を産んだことで、様々な人から責められたのだろう。そして、自身も、イルト王子を産んでしまったことに絶望を感じている。しかし、だからといって、何の罪もないイルト王子を攻撃するのは間違っている。
「イルト様の素晴らしさなら、私だってたくさん知っていますっ!」
『イルト王子は素晴らしい』。その事実を知る同志を前にして、私達は、お互いに、婚約者自慢、もしくは、弟自慢を繰り広げるのだった。
イルト君のお母さん、うぅむ、イルト君としては複雑ですなぁ。
それでは、また!