第百三十話 白黒兄弟4
ブックマークや感想をありがとうございます。
はっ、そういえば、感想の返信、前のやつやってなかった!?
と気づいた今日この頃。
きっちり、返信しますねっ。
それでは、どうぞ!
ひとしきり、イルト王子とアルト王子の二人と過ごした私は、もうまもなく帰らなければならない時間になっていた。
(結局、あのことは聞けずじまい、かなぁ?)
イルト王子を悪し様に言っていた女性のことを、アルト王子に聞くタイミングは、ついぞこなかった。これは、『影の耳』達を動かすしかないだろうかと考えながら、イルト王子にエスコートしてもらって、馬車まで向かう。
「あっ」
「みゅ? どうしましたか?」
もうちょっとで玄関、というところで、イルト王子は小さく声をあげて立ち止まる。
(さっきの女性……の声は聞こえないけど……)
何か、不味いことでもあっただろうかと、イルト王子の顔を覗き込めば、イルト王子はほんのり顔を赤らめて、あたふたとしだす。
「えっと、その、ユミリアじょう……」
「みゅ?」
「うぐ、あ、あの……」
「あっ、そっか、イルト、ここはまかせて、いってくるといーぞっ」
「あ、ありがとう、にいさん」
何がなんだか分からない私とは違って、アルト王子には心当たりがあったらしい。
「ユミリアじょう。すこしのあいだだけはなれるけど、にいさんといっしょにいてくれる?」
「はい。しっかりイルト様のこと、待ってますねっ」
どうやら、何かあるらしいイルト王子へ、そう返事をすると、イルト王子はふんわりと微笑む。
(くっ、可愛い! 私の婚約者が、可愛すぎてつらいっ)
「……えーっと、てをはなさないと、うごけないとおもうぞ?」
私とイルト王子を交互に見たアルト王子の指摘によって、私達は、お互いに手を取り合ったままだと気づく。
「……にいさんは、ぼくにユミリアじょうをてばなせ、と?」
「ちがう。はやくいって、はやくもどってきたらいーんだっ」
「イルト様、私も離れがたいですが、少しの辛抱ですっ」
「ユミリアじょう? イルトは、ちょっとわすれものをとりにいくだけだぞ?」
「ユミリアじょう。かならずもどるから、ぜったいにまってて」
「おーい、イルトー?」
「はいっ、いつまででも、お待ちしておりますっ」
「あれ? これ、そんなにそーだいなはなしだったっけ?」
アルト王子を突っ込み役に勝手に任命して、お互いに気恥ずかしさを紛らわせるための茶番を演じた私達は、ようやく、その手を離す。
(……ま、まぁ、離れがたいのは、本当だけど……)
それでも、今の会話は大袈裟だということくらい、私もイルト王子も理解していて、ひとまずは一度別れることとする。
「あっ、そーか。いまのが、こいびとどうしのふつーのやりとりなんだなっ!」
「違います」
そして、私は勘違いをしてしまったアルト王子へ、バッサリと否定の言葉を述べるのだった。
アルト君、ほのぼの要員?(笑)
次回は、きっと、あの女性が何者だったのかが判明するはず!
それでは、また!