第十二話 泉
ブックマークや感想をありがとうございます。
評価の方も、結構してもらっていたみたいで、とってもありがたいです。
妖精達との出会い。
そして、可愛い歓談。
それでは、どうぞ!
この世界の妖精は、安全な存在なのだろうかと、私は目の前の可愛い妖精達を見て考える。いや、けっして、可愛いが溢れていて絆されそうになっているとかいうことはない。……多分。
そして、それ以前に気になる発言もある。
「いちょしごってにゃに? (愛し子って何?)」
先程から、ピンクのふんわりとしたワンピースを着た妖精から、『愛し子』と呼ばれているのが気になった。何せ、人間にとっての私は、『忌み子』という言葉の方が当てはまるような状態なのだ。この世界で私を愛してくれるのは、メリーくらいしか居ない。
『愛し子は愛し子よ』
『神様に愛されてるのー』
『ラブラブなのー』
「かみ……」
『ラブラブ』の言葉づかいがおかしい気はするが、それよりも、『神様に愛されている』という言葉に衝撃を受ける。
(えっ? ストレージの中身が全部なくなってたのに!? 何か、変な称号までつけられたのに!?)
恐らくは、死んだ後に出会ったあの女性が女神様なのだろうとは思っている。そして、全ての元凶だとも……。
「わちゃしが、あいちゃれてりゅ? (私が、愛されてる?)」
『『『そうなのっ』』』
えっへんと胸を張る妖精達の姿はとても愛らしい。そのせいで、ついつい、まぁいっかと先程の発言を流しそうになって……実際、流すことにした。何せ、確認方法など存在しないのだ。
「ちょうにゃにょ……(そうなの……)」
『そうなのよっ。それで、愛し子ちゃんは、どこに行きたいの?』
『僕達なら安全ー』
『転移よりも負担はないよー』
そう言われて、確かに、転移の直後は頭がクラクラするなと思う。しかし、そのくらいは負担でも何でもない。ただし、私が行きたい泉は、転移では行けないように、特殊な結界が張られているため、彼らが送ってくれるというなら助かる。
「こにょもりにょいじゅみにいちちゃいにょっ(この森の泉に行きたいのっ)」
とりあえず、行けるかどうかを聞いて考えれば良い。そう思って宣言すれば、妖精達は一斉に顔色を変える。
『ダメよ、ダメっ!』
『危ないよー』
『泉は危険ー』
「みゅ?」
妖精の森の泉は、ある妖精が一人だけ存在する泉だ。ちょっと小生意気な彼は、プレイヤーがほしい素材に応じて試練を課してくる妖精で、私もミニゲームとして色々な試練をクリアしてきた。そして、今回私が欲しているのは、『妖精の魔力水』と呼ばれるものだ。これは、ここの泉でしか得られないものであり、万能薬のような高レベルで生成する薬剤に必須の素材だ。錬金術だろうと、調薬だろうと、どちらでも必要な素材なのだ。だから、泉に行かないわけにはいかなかった。
「にゃにがあぶにゃいにょ? (何が危ないの?)」
『コツ生』において、その泉自体には何の危険もなかったはずだ。しかし、妖精達は危険だと言う。もしかしたら、『モフ恋』ならではの危険が存在するのかもしれない。
『あいつは危険よっ』
『危ない妖精居るのー』
『近寄るのメッ』
「みゅう……」
危ない妖精と言われても、私はそこに居る妖精は一人しか知らない。まさか、その妖精が危険というわけではないだろうと思いつつも、私はその妖精の名前を聞いてみる。
『あいつの名前?』
『知りたいのー?』
『あいつは――――』
そして、それを聞いた瞬間、私はやっぱり、泉に行くことにするのだった。
さぁ、泉の妖精に何が?
次回、泉に到着です。
それでは、また!