第百二十八話 白黒兄弟2
ブックマークや感想をありがとうございます。
もうちょっとだけ、ほのぼの空間をお送りして参りますっ。
それでは、どうぞ!
城の庭園は、前に王妃様主催のお茶会が行われたローズガーデンの他に、フルーツガーデン、ロイヤルガーデンの二種類が存在する。お茶会が行われるのは、ローズガーデンかフルーツガーデンで、ロイヤルガーデンは王家の人間しか立ち入ることの出来ない場所とされている。
そうして、私が案内されたのは、フルーツガーデンの方だった。
「ふわぁっ」
フルーツガーデンは、その名の通り、フルーツとなる植物が植えられている庭だ。しかし、このフルーツガーデンの特徴はそれだけではない。ここに植えられた植物達は、客をもてなすために、美しい花をつけたもの、美味しそうな実がついているものを中心に、各々移動するのだ。だから現在、私の前には美味しそうな梨を実らせた木があったりする。
「美味しそうな梨ですねっ」
「おぉっ、ざんしんなかんそうっ」
「ちがう、にいさん。ユミリアじょうは、かわいいんだっ」
私の感想に対する反応を聞いて、私はハッとする。
(そういえば、普通のご令嬢は、花の方を見るよね?)
何せ、ご令嬢は料理をしない。何かの実がみのっていても、それが何なのかまでの知識はないのが普通だ。たとえ、実の方へ意識を向けたとしても、そこで『美味しそう』という感想は絶対に抱かない。せいぜいが、『可愛い』くらいだ。
「ユミリアじょうは、ものしりだね」
「は、はいっ」
イルト王子にやんわりと言われて、私は少しだけ嫌な汗をかきながら答える。さすがに、料理を作ります、なんてことがバレるのは避けたい。それでイルト王子が私を嫌うことはないと思うが、それが知れ渡ると、そんな奇人が婚約者ということでイルト王子の評価も下がりかねない。
「ユミリアじょうっ、ここのきのみは、いっこくらいならかってにとってたべてもおこられないんだ」
「にいさん、ユミリアじょうにへんなちしきをうえつけないでっ」
「なんでだ? イルトだって、おいしいってたべてるだろ?」
「そ、それは……」
どうやら、アルト王子もイルト王子も、ここで自由に果物を取って食べているらしい。それはきっと、背後に居る護衛達にでも皮を剥いてもらっているのだろう。
「ならば、ぜひ、食べましょう! どれがおすすめですか?」
「なら、こっちのむらさきのやつっ」
「にいさん、だめだよ。それはてがよごれちゃう。それより、こっちのりんごがいいよっ」
「えー、なら、ユミリアじょうがみてたなしのほうがおいしいぞ?」
(ブドウにりんごに梨っ、見事に秋の味覚っ!)
私が食べたいと言えば、イルト王子はアルト王子の言葉に難色を示していたことも忘れて、嬉々としてこれが良い、あれが良いと勧めてくれる。
アルト王子は、柿も好きらしいが、イルト王子は、渋いやつもあるからダメだと却下している。
(アルト王子の方がお兄さんのはずだけど、何だか、こうして見るとイルト様の方がお兄さんっぽい)
そんな光景を微笑ましく見ていると、どこからか、女性が騒いでいるような声が聞こえてきた。
ふむふむ、何やら事件の気配……?
それでは、また!