第百二十六話 見つからない黒幕
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あのパーティーから一週間。今日は、本来ならばイルト王子に会える日ではあるのだが、あの襲撃の黒幕が不明であることから、イルト王子の方からこちらへ出向くことはできない状態で、今は、私がお城へ向かっているところだった。
「みゅう……早く、黒幕を見つけたい……」
『影の耳』達は、恐ろしい速度で情報をかき集めてくれている。しかし、それでも、黒幕にまで辿り着けていなかった。ボンボ男爵の背後に誰が居たのか、いや、そもそも、黒幕なんてものが居るのかも怪しいと言えるくらいに、全く手がかりがない。
「あまり考えたくはありませんが、黒幕を知る者は口封じで殺されているのやもしれませんね」
同じ馬車に乗っているメリーの言葉に、私は『やっぱり』と思う。もう、それ以外に考えられないというくらいには、イルト王子襲撃の黒幕が分からなかった。
イルト王子と私に対する襲撃によって起こったのは、第一王子派の崩壊の危機。特に、過激派と言われる派閥は、普段の様子から、イルト王子襲撃の犯人ではないかと目されてしまい、随分と肩身の狭い思いをしていると聞く。
あの、どちらの派閥に属しているのか分からないエルドン侯爵に関しては、現在、穏健派に傾いた状態で落ち着いている。……情報を集める過程で分かったことではあるのだが、エルドン侯爵は陛下の命令で第一王子派に属しており、その動向をコントロールし、情報を陛下へ渡すスパイのような役割をこなしていたようだ。本人は、イルト王子のことを特に良くも悪くも思っていない状態で、あの時の襲撃も、事前に情報を得ていれば、何らかの手段で避けられるように陛下へ情報を流していたはずだったのだ。しかし、残念ながら、全く事前情報がないままの事態だったため、私が居なければ本当に危なかった。
(それも、おかしなことの一つ、ではあるんだよね)
エルドンは、第一王子派の主要人物として目されている。だから、彼には多くの情報が入ってくるはずなのだが、あの襲撃の情報だけはなかった。それはつまり、エルドンと同等、もしくはそれ以上の立場の人間が動いた証拠でもあるのだが……。
(それにしては、全く情報がない)
容疑者は三人。ゾーラ夫人、エルドン侯爵、そして、レイア嬢の父親でもある、ミルテナ侯爵だ。しかし、彼ら彼女らに『影の耳』を張りつかせても、黒幕と思える証拠が何一つあがってこない。一番怪しいのはゾーラ夫人なのだが、彼女自身も、彼女の周囲も、黒だと言えるだけの証拠を持たない。
「ユミリアお嬢様。そんなお顔ではいけませんよ? 今は楽しむ時です。さぁ、その可愛い笑顔を見せてください」
うんうんと悩んでいれば、見かねたメリーが苦笑しながら告げてくる。
(うん、まぁ、それもそうだよね?)
今日はイルト王子に会える日なのだ。こんなに沈んだ状態で会うわけにはいかない。
「心配かけてごめん。でも、ありがとう」
「いえ、可愛いお嬢様のためなら、どんなことだってしてみせますよっ」
そんな会話を交わしながら、私達は入城を果たした。
さぁ、何か進展はあるかなぁ?(色々な意味で)
それでは、また!