第百二十五話 私の計画
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は……うん、セイ視点を読んだ後で、ガックリくるかも?
それでは、どうぞ!
セイがカプリとスイートポテトを口に入れては、幸せそうになる様子を見ながら、私は、自分でもスイートポテトを食べてみる。
(うん、上出来っ)
やろうと思えば、料理キットで簡単に料理を作ることはできる。それこそ、十秒ちょっとで、面倒な作業全てをすっ飛ばして、何もかもを完成させることはできる、のだが……昔のように、自力で食料調達も調理もしなければならないようなことはない上、料理番のトニーとも仲が良いので、このスイートポテトは、こっそりと厨房を使わせてもらって、普通に作っていた。
(弟か妹かは分からないけど、その子にも、いつか、こんな風にお菓子を振る舞ってあげたいしねっ)
お継母様のお腹の中に、新たな命が宿っていることを知った私は、今、様々なことへと精力的に取り組んでいた。ものづくりに関するあれこれはもちろん、弟か妹が暮らすこの場所で、不穏なものがあってはならないとばかりに、『影の耳』達を量産して、情報収集に勤しんでいる。もちろん、他国の情報を得るための、『青い鳥』も量産したため、今後はかなり多くの情報を得られるはずだった。
(後は、『影の口』の改良版……いや、『ゴーストライター』を作ってみようかな? それで、情報を書き起こしてもらって、情報検索機能を持った端末を作ったりもして……やりたいことがたくさんあり過ぎるっ)
最終的には、人工衛星も打ち上げて、地理の把握に努めたり、自然災害が予測される場所が近かった場合、それを抑える道具を作ったりもしたいところだ。
(あぁ、万が一、魔王がこの世界を滅ぼすことになった時のために、避難先の星の確保もしたいな。いや、むしろ、星がなかったら、それを作ってみるのも良いかも? あっ、宇宙船は、異空間で作らないと、普通に作ったら目立つよね?)
「ユミリアお嬢様は、天才でございますねっ。こんなに可愛くて、可愛いのに、お菓子まで作れるなんて……。つ、次のリクエストは、僭越ながら私の番ということなので、あんこというものを使ったお菓子を、その、お願いできませんか?」
「みゅっ、分かった! あんこなら、何が良いかなぁ? 普通にお饅頭とか? 大福も良いかなぁ? どら焼き……羊羮、きんつば、お汁粉とか?」
あんこは、私が作るまで誰も知らなかったようで、メリーは私があんころ餅を作った時に、このあんこの虜となっていた。
聞き慣れないだろうお菓子の名前を前に、メリーはキラキラと目を輝かせている。これは、期待に応えなければならないだろう。
「楽しみにしててねっ、メリー」
「っ、はいっ」
私も毎日お菓子を作るわけではない。しかし、こうも楽しみにしてもらえると、早く作りたいなという気にもなる。
(それに、この時間は、私達がそれぞれの立場を忘れて触れ合える貴重な時間だし……うん、がっつりお菓子を作ろうっ)
セイ達にもメリーにも、喜んでもらえるのはとても嬉しい。そして、ついでとばかりに、このお菓子には、しっかりと効果がついている。それをわざわざ知らせるようなことはしていないものの、もし魔王が現れるのであれば、あった方が良い効果ばかりだ。
(ひっそりと改造計画、順調に進めて、生まれてくる弟か妹を守るんだっ!)
すでに、ブラコン、もしくはシスコンの片鱗を見せながらも、私はまた一口、スイートポテトを口にした。
いやぁ、見事に、餌付けも計画のうち、になっていましたねぇ。
それでは、また!