第百二十四話 救い主(セイ視点)
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……ね、眠い。
何かおかしいところがあれば、また明日にでも修正します。
それでは、どうぞ!
「ユミリアー、って、うわぁ、何か、すごいことになってるね」
奥様の妊娠が発覚して、小さくお祝いをした翌日の今日。ユミリアは、朝からずっと部屋にこもって真剣に何かを作り続けていた。しかし、あまり根を詰め過ぎるのもよくないだろうと、僕はメリーに頼まれて、ユミリアを引っ張り出す役割を担って、この場に来ていた。
「何か、どれもこれも青いけど、何か意味があるの?」
ユミリアの部屋で見たもの。それは、大小様々な青い鳥だった。
「うーん、と……私の前世ではね、青い鳥っていうのは、幸福を呼ぶものだと言われているの。この子達は、輸送のために作ったものではあるけど、それによって得られるものが、私達に幸福をもたらしてくれますようにっていう願掛けのために、皆青いの」
そう言いながらも、よく分からない機具を使って、ユミリアはまた一つ、青い鳥を完成させる。
「って、そうだっ、僕は、ユミリアを呼びにきたんだった」
「みゅ?」
集中しているとはいえ、僕の言葉に反応したユミリアは、作業を一度止めて、僕の方へと向き直る。
「お継母様に何かあった、とか?」
「いや、そんな深刻な話じゃないよ。ただ、そろそろ休憩しようって呼びにきただけで……ほら、メリーがお菓子もお茶も持ってこようとしてたしっ」
そう言えば、ユミリアは『思い出したっ』とでも言いたそうな顔で、ストレージとやらから、何か平たいものを取り出す。
「セイが、前にリクエストしてくれた、甘いものお菓子、私の前世では、スイートポテトって呼ばれてたものだよっ」
そう言って、ユミリアは黄色の小さな塊となった甘いも達を見せてくる。
「これが、甘いものお菓子……」
実は、ユミリアが自分で料理できるということは、僕、コウ、ローランに加えて、メリーといった面々しか知らない。何でも、貴族のご令嬢は料理をするものではないらしく、ユミリアは料理ができることを隠しているのだ。そして、僕達に口止め料だと称しては、美味しいお菓子を作って振る舞ってくれていた。
「それにしても、この世界、たまにおおざっぱだよね。まさか、さつまいもとカボチャが、一くくりで『甘いも』って称されてるなんて……」
ユミリアが言うには、さつまいもは今世と前世を比べても全く同じもののようなのだが、カボチャに関しては、こちらの世界だとさつまいもの色違いとしての形を保っており、その色は、緑だったり、オレンジだったりする。そして、今回ユミリアが使ったのは、さつまいと呼ばれている形と色を持つ甘いもだった。
「あ、ありがとう」
ユミリアが、僕のために、料理を作ってくれるのは、実はかなり嬉しい。しかし、そんなことを感じさせないように、ちょっとそっぽを向きながらお礼を言えば、満面の笑みでうなずいてくる。
「また、リクエストがあれば言ってねっ! そして、今日はこれも一緒に食べようっ」
主が、しもべと食卓を共にするのは、あまり聞かない話ではある。しかし、ユミリアは度々僕達を同じ席に誘っては、美味しいお菓子を振る舞ってくれる。優しく、暖かな温もりをくれる。
(僕達は、今もまだ、ユミリアに救われてるんだ)
ユミリアからしてみれば、特に深い意味はないかもしれない。しかし、それでも、ユミリアの行いは、僕達の心を癒してくれていた。
(ずっと、側に居るから、ちゃんと頼ってよね?)
賑やかなお茶の席で、僕達は、共に、ユミリアのお手製のお菓子を食べて、頬を緩ませるのだった。
しっかり寝ておこう。
それでは、また!