第百四話 レッツ、パーティー!7
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さぁ、敵はどこから来る!?
それでは、どうぞ!
私とイルト王子が踊り出せば、それなりに注目も集まる。これが、普通の貴族令嬢と王子であれば、微笑ましいという視線があったのだろうが、残念ながら、私達はともに黒である。嫌悪や侮蔑の視線が大半だ。そして、その中でも、明らかに殺気立っている人物がチラホラと居る。
(うーん、あれが実行犯かなぁ? でも、それにしては、人数が多い……?)
当初の想定では、『呪言の石』をイルト王子に触れさせる実行犯は一人だけだと思われた。しかし、殺意を持つ者がこうも多いと、少しばかり嫌な想像をせざるを得ない。
(まさか……確実にイルト様へ『呪言の石』を触れさせるために、派閥の人間を多く巻き込んだ?)
考えるまでもなく、イルト王子に『呪言の石』を触れさせた人間に未来はない。王族を害したのだから、一族郎党、処罰されると考えるのが普通だ。つまりは、敵は被害を最小限に押さえるため、捨て駒は一つだけにすると考えていたのだ。
(……バレない自信がある、ということ?)
この日のためにしっかりと練習したステップを踏みながら、私はそっと周囲に視線を向ける。
怪しい人物をさりげなく視界に入れてはみるものの、特に変わったものを持っている様子はない。
(ほんっとうにっ、形が分からないのが痛いっ)
『影の耳』達が集められる情報は、音声情報のみ。視覚情報は、残念ながら手に入らないのだ。そして、ゾーラ夫人は私の『影の耳』達を察知したわけではないのだろうが、誰かが聞いていると不味いという判断の下、配下への指示はほぼ文章のみで行っていたのだ。
(運良く、その配下が『呪言の石』という言葉を漏らさなかったら、もっと何も分からない状態だったはず)
時間がなかったせいで、ローランを送り込むという手段も使えなかった。ゾーラ夫人へとたどり着くまでが、あまりにも長かったのだ。
私と踊ることで、目をキラキラと輝かせるイルト王子を前に、私は絶対に、このイルト王子の心を壊させたりしないと決意を新たにする。
「ゆみりあじょう。たのしい?」
「はい、イルト様と一緒に居られる時間は、何よりも楽しいですっ」
「そっか……なら、いまのうちに、なにになやんでいるのかおしえて? なやみがないほうが、もっとたのしいにきまってるから」
困ったような表情で尋ねられた私は、咄嗟にイルト王子から情報を隠そうとして……『ダメ?』というお言葉とともにもたらされた、イルト王子の可愛い上目遣いに撃沈する。
(ぐふっ……な、なんて破壊力……)
どうにかステップを乱さずにすんだのは、日頃のレッスンのおかげだ。
「ぼくだけなにもしらないのは、つらいよ」
そして、そんなイルト王子の言葉に、私は少しだけ考えて、イルト王子に、正直に話すことにしたのだった。
イルト君、仲間外れは嫌だとばかりにユミリアちゃんから詳細を聞きたい模様。
吉と出るか、凶と出るか?
それでは、また!