第百一話 レッツ、パーティー!4
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さて、それでは敵さんに、ご挨拶、を。
それでは、どうぞ!
周囲を警戒していた私達の元にやってきたのは、少しお腹の出た壮年の、貴族男性。エルドン侯爵だ。彼は、ニコニコと笑みを浮かべながら、律儀にイルト王子へ発言の許可をもらう。
「この度は、まことにおめでとうございます。いやはや、本当に、めでたい」
このパーティーが始まってから、イルト王子に祝いの言葉を告げる者はちゃんと居た。と、いうより、それを行うのは義務のようなものであるため、祝いの言葉は当然のものなのだ。しかし……彼らは皆、イルト王子に直接視線を向けることはなかった。
もちろん、王族をマジマジと見つめるのは失礼な行為にあたるのだが、それでも挨拶などで話をする際に相手を全く見ないということはあり得ない。視線を合わせれば呪われるとでも思っているのか、イルト王子にまともな視線を送る者は一人として居なかった。……居なかった、はずなのだが……。
(エルドン侯爵は、普通に視線を向けてるね)
彼も一応、第一王子派ではあったはずだが、その中での立ち位置がいまいちはっきりしない。過激派の手助けをしたかと思えば、穏健派に助言する。今回も、もしかしたらこの侯爵が裏で手を回しているかもしれないと警戒したくらいなのだが、実際に相対してもその心の内は理解できない。
「ありがとう。えるどんこうしゃく」
「いえいえ、リーリスの更なる発展を期待する愛国者としては、当然のことでございます」
今回、襲撃を企てている者達の黒幕かもしれない男が目の前に居るにもかかわらず、彼はやはり、欠片足りとも失言をしてはくれない。
(ここは、私の出番かな?)
そう考えた私は、軽くイルト王子の手を握って、イルト王子の注意をこちらに向けて、一歩、前に進み出る。
「初めまして、エルドン侯爵様。私は、アルテナ家が長女、ユミリア・リ・アルテナと申します」
「これはご丁寧にどうも。ハウエル・ル・エルドンと申します。アルテナ嬢も、ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます。ところで、私、エルドン侯爵に会ったら聞いてみたいことがありましたの」
今までの会話は、当たり障りのない、普通の会話。その裏に隠れた本音は、まだ暴けない。だからこそ、私はここで仕掛ける。
「おや? アルテナ嬢に名前を知られていたことも驚きではありますが、ここは、素直に質問に答えましょう。何ですかな?」
ただの五歳児と侮ってくれているらしいエルドン侯爵に、私はうっすらと笑みを浮かべる。
「はい、それでは……なぜ、エルドン侯爵は派閥の中で明確な立ち位置をお決めにならないのですか?」
その質問に、エルドン侯爵は少しだけ目を見開いて、そこに警戒の色を宿した。
さぁ、エルドン侯爵は、誰の味方?
それでは、また!