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ゆるい監視  作者: くんし蘭
2/2

再開



今年で高卒社会人2年目。私は20歳を迎えた。

1月に迫る成人式までは1ヶ月をきっていた。


当日は着物をレンタルして成人式に出席して数少ない女友達と適当につどいの広場で再開して、ささっと帰るつもりだ。


「そういうば、椋代くんは来るのかな。」


会社も休みの本日土曜日。

1人、部屋で呟いてみる。


同い年の彼も恐らく1月の成人式には出席するであろう。もしも会えるなら直接お礼を言いたい。

いつも癒しのツイートをしてくれてありがとうございます。これからもよろしくね。

いや、普通に気持ち悪い。

堂々と私自身としてフォローして関わればいいのに。

何で私はこそこそと匿名アカウントで監視したりしているのだろう?


「うーん…とりあえずLINEをしてみようかな。」


椋代くんのLINEは高校の時に交換して知っている。だがLINEを送った事は無い。

在学中は特に緊急事態も無く過ごしていたし、LINEを送るほどの間柄でも無いからだ。


何て送ったらいいのかな?

成人式で会いませんか?いや、唐突過ぎる。


迷いに迷った結果、私が送ったLINE。


『 久しぶり!同じ部活だった佐倉だよ。

質問があるんだけど、成人式の後に同窓会か何かあるのかな?( ・∇・)』


という内容。あくまで質問をしたいが為に送りましたよ感を出してみた。これなら不自然じゃないかな。


「送信!……え?」


既読がコンマ2秒程度で付いた。レスポンスが早すぎる。

驚いて変な声が出てしまった。

もしかして絶賛お友達とLINE中で、間違えてすぐ私のトークを押してしまったのだろうか。


すぐに返信は返ってきた。


『 久しぶり!元気?椋代です。高校の同窓会は特にきいていないよ。佐倉は成人式に来る予定なの?』


高校時代の口数少ない椋代くんからは想像出来ないくらい早めの返信だった。

しかも質問で終わってくれているから返信しやすい。私はすぐに返した。


『 元気だよ!そうなんだね。私も成人式に行く予定だよ。』


それから何通かやり取りを進めた。私は現在の椋代くんについて知らないていで話を進めなくてはならないので苦労した。

何故かTwitterを監視している事は言えなかった。

椋代くんの返信が異常に早いことに驚きが隠せなかった。

かくして、私と椋代くんは成人式当日につどいの広場で再開する事に決まった。



そして当日。式は滞りなく終わり、女友達とも再会を果たしてまた別れた。

椋代くんから時間を指定してきたので、了解して集合場所で待つ。

もう振袖を着て4時間ほど経つ。

そろそろ内臓が帯で締められて苦しくなってきたなーなど考えていると、


「佐倉さん!」


声に顔を上げると、スーツを着た大学生の椋代くんがスマホを片手にこちらに近付いてきた。

椋代くんは高校時代からヒョロりとした体型で背が高めなので、スーツは似合っていた。

今日は眼鏡を外している。コンタクトかな?


「久しぶり!よく私って分かったね。」


私は高校時代、胸下程度まで髪を伸ばしており、現在はセミロングにしてアッシュカラーに染めているので外見の変化に気付かれないかと危惧していた。


「分かるよ。とりあえず写真撮らない?」

「良いよ。」


椋代くんが素早くカメラを起動し1枚撮る。

逆光でとんでもなく不細工な顔をしてしまった。


「後でLINEに送っておくね。」

「うん、ありがとう。」

「どこか話せる所に入る?」

「え?あぁ、そうしようか。」


まさか椋代くんから誘ってくるとは…と若干驚きつつ、近くのチェーン店の喫茶店に入店した。


軽く高校時代の思い出話をした。

といっても、あの先生は今何をされているだとか、あの同級生は上京したとか。

私は思い切ってきいてみた。


「椋代くんって、高校の時より明るくなった?」

「ん?そう見える?大学生になったからかなぁ。」


珈琲をすすって椋代くんはへにゃ。と笑った。


何故か私は胸が痛くなった。

(やばい…可愛い…癒される、、、、、)


「佐倉さんは、仕事どう?印刷メーカーに就職したんだよね。」

「そうだよ!まぁ、2年目だからまだまだ大変かなー。」


椋代くんに就職先を教えたっけ?まぁいい。


「一人暮らしだよね?大変じゃないの?身の回りの事とか」

「…え?まぁ家事は元々実家でもしてたし、料理は好きだから苦じゃないよ。」


一人暮らししてる事も知っているのか。誰かにきいたのかな。


その後、お互いの現在について話し合った後、お開きする事になった。

喫茶店にいた時間は30分程度だった。

私は振袖が苦しくてそろそろ限界だったので、丁度良い頃合だった。



「佐倉さん僕の車で送るよ。」

「え!??いいよいいよ」


何故私がここまで拒否するのか。それはTwitterの情報で椋代くんの家と私の家が真逆方向にある事を知っていたからである。


「何か、顔青ざめてるし、苦しそう。」

「…ちょっと帯が苦しくて。」

「放っておけないよ。駐車場すぐ近くだから着いてきて。」

「…椋代くんありがとう。」


結局、一人暮らしの家まで送ってもらい、階段を登る時も手伝ってもらった。


「本当にありがとう。また今度お礼させて欲しい。」


私は今回限りで終わりたくない一心で、そんな言葉がついて出た。


「いいよいいよ、じゃあまた。」


椋代くんは颯爽と車で走り去った。

この辺の道は慣れていると彼は言っていた。


LINEを開くと椋代くんから画像が送られて来ていた。


「スーツ格好良かったな。」


すかさず、帰宅厨にログインし、先程別れた椋代くんのアカウントを確認する。

成人式の準備なう。というツイートしかされていなかった。


いつか私が椋代くんのTwitterに登場する日は来るのだろうか。

私は振袖を畳みつつ、夢想した。





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