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私の世界2〜ユキのそれから〜

「離婚すると愛の女神様から天罰が下る。もちろん知ってると思うけれど」


チャレンジャーだね、とセドリックが首を傾げた。


「て、天罰ってなんだっけ?」


たらり、と背中に冷や汗が垂れる。


「あれ、そうか。雪は知らないのか。あの愛の女神様は気まぐれでしょう? 婚約破棄だけなら、人間の方の罰金刑で済むけれど、離婚はすると大変な罰が下る」

「早くどうなるのか教えて」

「離婚した人は周りで見た事ないから分からないけど、本には死刑と書かれていたな。他には女神様の機嫌が良い時には、もう一生愛を語れないようにと口のきけなくなる呪いとか」


私を大変な目に合わせた女神ならやりそうだ。

離婚したら最悪死刑。


---


私、木下雪きのしたゆきは既婚者だ。

今は高校生だけど、中学生の時には結婚していた。


妄想じゃない。


異世界で結婚していた。

もう一度言おう。

異世界で結婚していた。


中学生で乙女ゲームに似た異世界に飛ばされた。

そこで高校生くらいの年齢になって、結婚した。

結婚が、愛の女神に元の世界に返して貰う条件だったのだ。


結婚する為に、散々人に迷惑かける行為をした。

今ならもっと良いやり方は色々あったと思う。

けど、急に人を誘拐した愛の女神にも責任はある、はず。


それはともかく。

異世界から戻ったら、また中学生になっていた。

異世界の人にも迷惑かけたし、パパママにも迷惑かけた。


もしかしたら、異世界の事は私の悪夢か妄想かもしれない。

リアルな記憶は封印しよう。


今度こそ心を入れ替えて、久しぶりの(何年かぶりの)中学に登校した。


そこにはセドリックがいた。


中学生くらいに縮んでる?!


いやいや、問題はそこじゃない。

異世界に置いてきたと思った結婚相手がいた。


あれ、異世界は妄想じゃなかった?

いやいやただの似ている人かもしれない。


クラスでの授業を終え、セドリックはさておいて帰ろうとすると、


「雪。さあ、途中まで一緒に帰ろうか」


と、とてもかっこいい笑顔で私に言い放ったのだった。


あ、異世界はやっぱり妄想じゃなかった。


---


……あの時の騒ぎは尋常じゃなかった。


それから高校生までセドリックとは離れられてない。

私は遠い目をした。


「ねぇ! ちょっと聞いてんの?! あんたとセドリックくんは釣り合わないから別れなさいって言ってんの!」

「あ、ごめんなさい。そう、そうだよね」


私は目の前の事に意識を戻した。

現在地は高校の体育館裏。


放課後に複数の女の子達に呼び出されてここに居る。

セドリックと私が一緒にいる事が気に入らない子達だ。

皆、可愛い顔をしているのに目が釣り上がって酷い。


正直、前の私だったらまた学校行きたくなくなる。

あの小学校の頃に何となく人間関係や勉強がしんどくなった私なら。


ただ、異世界の令嬢達に弾かれまくった体験をした今では全然平気だ。

しかも、私は精神年齢は3歳ぐらい上だ。

異世界で令嬢修行して精神破壊した時までそのぐらいを過ごしている。


「全部言う通りにするわ。別れてくれるように一生懸命お願いする」


そう、もっとセドリックには良い人がいるはずだ。

異世界ではヒロインだった私と愛し合ってくれたけど。

セドリックの事好きだけど、異世界から私を追いかけてきてくれてありがたいけど、でも。


「これ何回めの騒ぎなんだろうね」


振り返ると、そこにはセドリックが居た。

ようやく異世界で会った時と同じぐらいまで成長したセドリック。

薄い茶色の髪に薄い茶色の澄み切った綺麗な目。

爽やかに微笑んで、ゲームの中の王子様みたいだった。


……私は自分の目がハートになっているのを感じた。

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