僕のニャンコちゃん〜ニャンコとケイヤのペットな関係〜
「素敵な方と踊れて夢のよう………にゃん」
「僕も君みたいな子猫ちゃんと踊れて嬉しいよ。黒髪黒目なんて珍しいね」
「………うふ、にゃん」
目の前でニャンコ言葉の女と婚約者が華麗なダンスを見せている。
結構人が集まっている夜会でいい度胸だ。
最近、婚約者がいる男に声をかけまくっている第7貴族の女がいる、とは聞いていた。
「へぇ、なわばり荒らしね」
まあ、私も低めの第6貴族。
そこから頑張って今の身分の高い婚約者を狩った。奪われやしない。
そこそこかわいいからって、それじゃ無理ね。
私は2人のダンスが終わる頃合いで大きく息を吸った。
「寂しいにゃんにゃん。ニャンコ以外と踊っちゃヤなの!」
軽く握ったこぶしを両手ともアゴの下に。目は大きく見開いてまばたき多めに。
「おや………? ごめんね。僕の子猫ちゃん」
麗しの私の婚約者が縄張り荒らしの女から手を放す。こちらを見て満面の笑みを浮かべた。
「ニャンコだけでしょ~? ケイヤ様~」
私が言えば女も、
「こっちのニャンコも見て欲しい…にゃん」
と張り合ってくる。
ケイヤ様は面白そうに私達2人を見比べて、軽くうなづいた。
「うん、君は黒髪が珍しいけどね。僕はニャンコだけでいいかな。ごめんね、子猫ちゃん」
「そ、そんな。どうすれば結婚ルートにいけるの………愛の女神は」
女が結婚とかいう大それた事をつぶやいた。
そのまま真っ青になって、力なくふらふらと会場の端に歩いていく。他の貴族の方達がそれとなく避けて道を開けた。
勝ったわね。
ま、中途半端な事じゃ私には勝てないわ。
「何だか妙に強引な子だったなあ、本当にごめんね。僕のニャンコちゃん」
「ケイヤ様、だぁい好きっ」
「僕もだよ」
ケイヤ様は笑って頭を撫でてくれる。
私の金茶色のふわふわした髪が好きなのだ。
昔飼っていた猫と毛並みと色が同じだから。
もちろん、元はライトグレーの髪を染めたの。ストレートの髪を編み込んで癖もつけてる。目の色はブルーでセーフ。
「僕のかわいいニャンコちゃん」
「にゃーん………」
名前もニャンコに変えたのよ。
ケイヤ様………身分が高くて綺麗なお顔、そしてとても繊細なお方。昔飼ってたかわいい猫が死んでしまって落ち込んでいた。
あなたの笑顔が見られるなら、私は猫にだってなるわ。
ニャンコ………元はエリザベータは、僕に猫の仕草をして微笑んだ。
小さい時から僕だけを見ていた女の子。
だいぶ昔、僕は大事な猫が死んで塞ぎこんでいた。
そんな僕に、エリザベータは髪を染め名を変えて猫の代わりをしてくれた。
情けない僕。
身分と顔以外には何もない。
エリザベータは僕に笑っていて欲しいみたいだ。僕はエリザベータさえいれば笑顔でいられる。
時々思う。
僕は自分に自信がないから、エリザベータを閉じ込めておきたい。
本当の家猫のように部屋に閉じ込めたい。
僕が餌をあげて毛づくろいをしてお風呂にいれてあげたい。
エリザベータの目に僕しか映したくない。
大好き、ニャンコそしてエリザベータ。