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第六話:お仕事したくないからね。

間違ってこの前庭投稿していました。通知から来た方は見ないでください(土下座)


ーーー


「じゃあお前は異世界から来て、急にここに放り出された。元は王国の第一王女って事か?」


 そう問われる。飲み込みが早くて助かるが、よくこんな話を信じてくれると思う。


「知り合いの爺さんに、そういう書物を持った奴がいる。あと、お前が来る一週間ぐらい前、こっちでもこの国の第一王女が消えた。そいつはそっちの世界に行ったんじゃねぇか?」

「うわぁ、大変ですねその人……」

「お前もだろうが」

「私はどこに行っても我が道を貫く類型(タイプ)ですので」

「だろうな」


 深く頷かれた。解せぬ。

 と、魔物が右から来ていたので火魔法で焼く。

 この話をしている間、かなりの魔物がきたので、戦闘には大分慣れたと思う。よかったよかった、と壁際に寄せられている大量の魔物に気づかない振りをして顔を背ける。


「で、お前は元の世界に戻りてぇのか?」

「う〜ん……」


 悩む。この世界も面白そうだが、向こうには私の騎士達がいる。騎士達は私のことが(多分)大好きだし、女とはいえ、優秀さから国にも深く関わっていたため、向こうでは大騒ぎだろう。


 だが、魔物を一度観察してみたかったのもあるし、冒険者なんてここでしかできない。

 私の出した結論はというと。


「二年間ぐらいここにいて、丁度よく冒険者に飽きたところで迎えが来て、また冒険者に成りたかったらもう一度ここに転移したいです」

「……」

 なんともいえない顔をされる。

 突っ込んでくれると嬉しいのだが。


「つまり今すぐ戻りてぇ訳ではないんだな?」

「ないですないです。もうちょっと魔物とか観察してから戻りたい」

「都合良すぎんだろ」


 呆れたようにそういうギル。でも今帰ったら確実に騎士だの義弟(きょうだい)だのに怒られ泣きつかれ、父親から蹴落とされる。


 そして溜まっている仕事を部下から押し付けら……考えるのはよそう。


「まぁ、絶対に帰りたい訳ではありませんね。強いていえばおやつのスフレが心残りです」

「……」


 もはや何も突っ込んでくれない。お姉さん悲しいです、めそめそ。


「帰る方法は?探らねぇのかよ」

「はい。こっちでも暮らしていけそうなので」

「随分と執着が薄いんだな」


 そう言われるが、別にそういう訳ではない。

 騎士には挨拶ぐらいしておきたかったし、父親とのバトルも懐かしく感じている。


 だが、それとこれとは別だ。どうしても側におきたい者がいる訳でもなく、守りたい者もいない今、向こうにいたいと考える絶対的な理由がない。


 どう言おうかと迷っていると、ギルが呟く。


「じゃあお前は、ずっとこっちにいんだな?」

 ふむ。


「それはわかりません。またどこかへ飛ばされてしまうかもしれませんし、向こうに戻される可能性もありませんから」

「そういうのがない限り、だ」

「それはまぁ、そうなりますね」


 一体この問答はなんの意味があるのだろうか。帰る方法も飛ばされた理由もわからない今、そうなるのは必然だろうに。


「でももしここにいるのが飽きたら、またどこかへ行くかもしれません」

 そういうと顔を顰められる。


「そういうとこ言ってんだよ。普通家族だの友人だのに会いたくなるもんだろ」

「あー……。確かにそれはないかもしれません」


 そういうと、ギルは苛立たしげに舌を打った。

 これだから、とギルは思う。


 無意識に人の中にズカズカと入りこみ、その割にこちらが大切だと思った時にはもうふらふらとどこかへ去って行く。

 こちらがどれだけ想っても、いつも通りの無表情でいなし、こちらには絶対に執着を見せない。


 多分こいつは、そういうやつなのだろう。


 心のどこかで、こいつに惹かれる自分がいる。

 変わらぬ表情(かお)で吐く言葉に、振り回される自分がいる。


 向こうのやつらもそうなのだろう、今頃向こうは大混乱していそうだ。


 こいつは、縛りつけないと何処かへ行ってしまうから。

 連れ戻さないと知らぬ場所に居座るから。

 放っておくと他の誰かに取られてしまうから。


 絶対に取り戻すため、こちらに追い縋る。たとえ異世界だろうと、向こうの奴らは連れ戻しにくるだろう。

 執着が強ければ強いほど、早く。


「……渡すかよ」

「何を?」


 地獄耳なお姫様はこちらを見てそう問う。

 それになんでもない、と返して他を向く。

 どうしたの、何があったの、聞きたい聞きたいと煩く言ってくる視線を手で隠し、小さな想いを胸に目を閉じた。


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