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第十七話:小さな思惑

「はい、では、こちら冒険者カードになります。再発行には二週間ほどかかってしまうので、失くさないよう肌身離さずつけてください。また、こちらがギルド規定ですので、ある程度目を通しておいてください」


 私がカードを発行した時と全く同じ説明をされ、カミルさんにカードが渡された。名前と登録番号(ナンバー)が書かれただけのシンプルなカードだ。


 それを受け取り、これで俺もお前らのパーティの一員だな、どこか嬉しそうにいうカミルさんを見て、そんなにギルの戦いぶりが見たいのか、と内心引いた。


「おい、依頼決まったぞ。最下層の採集依頼だ」

「他国からの依頼だから、きっちりやってね」


 ひょっこりと依頼ボードの前からレオさん達が現れる。


 あの後から私は、結局私についていくことにしたカミルさんの冒険者カードの発行をしていた。その間、ギルとレオさんには依頼ボードを見てもらい、いいものを見繕ってもらった。


 そのままこちらに向かうと、レオさんは、この際だから依頼の受け方説明しちゃうね、と言い、私の前へ出る。


「依頼を受ける時は、受付にわざわざ行く必要はないんだ。ご覧の通り、受付口が四つしかないからね、職員に依頼を受ける暇なんてない。何せ職員は、依頼の整理から道具、薬物販売、新人教育までしているからね。本当にいつもよく働いてくれてると思うよ」


 説明かと思いきや半分以上身内自慢でした。今の所受付に行かなくていい、ということしかわからないんですが。


 じと目で見ると、わかってるよというように肩を竦められた。レオさんがまた口を開く。


「そこで開発したのが、最新魔術を詰め込んだカードと、この機械さ!」


 でんっと目の前に置かれたのは、私の両手のひらに収まるぐらいの小さな機器。画面には、ランク別の依頼が書かれており、右側にちょうどカードが置けるぐらいの窪みがあった。


「まずは、受けたい依頼をタップする。次に窪みにパーティリーダーのカードを置いて、読み込みが終わるのを待つ。そうしたら依頼の受領は完了だ。カードを取り出したら、名前の下の部分に依頼名と目標が書いてあるから、必ず確認してくれ。いいね?」


 レオさんがこちらを向いて確認した。はい、と頷くと満足気に引き下がり、じゃあやってみて、と言った。


 私は言われた通りに操作をする。

 えぇっと、依頼は……。ギルが持っている紙を見て依頼名を確認する。ふむふむ、『探し出せ!!最下層の宝箱!!』か。やけにテンション高いなこれ。

 ランクSの依頼から探してタップする。そしたら私のカードを置いて、読み込みが終わるまで待……読み込み早いなこれ。


 カードを確認すると、名前の下に先程の依頼名と、目標が書いてあった。えぇっと、何々、『迷宮四十八階層の宝箱を探す。期間は受領してから三日であり、それを過ぎたら罰金(金貨三枚)をギルド側に支払う』。


 成る程、ここに記されているなら、依頼に関した違反は起きなさそうだな。

 罰金が嫌で依頼を受けてなかったことにするとか、そういうのよくありそうだし。


「本当に便利ですねこれ。ちなみにこの作業、するのはリーダーだけでいいんですか?」


 浮かんできた疑問を口に出すと、力強く頷かれた。


「そう、そこがまた良い所でね。パーティのカードは連動しているから、自動的に他の子のカードにも記録されるんだ。ちょっとギルくん、カード見せて」

「あぁ」


 ギルさんがポケットからカードを取り出す。

 どうでもいいですけど剥き出しのまま入れとくと無くしますよ?


「ほら、こんな風に同じパーティメンバーのカードにも記録されてる。二度手間をかける必要はないよ」


 差し出されたギルのカードを見ると、確かに名前の下に同じことが書かれている。おぉ、これは凄い。間に何か挟まずに魔力を伝えるのは、本当に難しいことなのだ。

 うちにも導入したいなこれ……。


「ちなみにおいくらで?」

「金貨十枚。かなりお高いでしょ」

「はい、高い……高いですかこれ」

「お前を基準にして言うな」


 カミルさんにツッコまれた。

 あれ、でもギルさんが買っても五千個は買えますよこれ。いや、ギルさんも普通じゃないか……。


「そうでしたね、軽率な発言は控えることとしましょう」

「それが懸命だね」


 金貨五千なんて、言い触らしていたらどこの誰に襲われても文句は言えない。最低限の自衛はできるはずだし、大丈夫だと思いたい所だが。


 うんうん、とこの世界での身の振り方について再確認していると、レオさんから号令がかかった。


「さて、機械の説明はこれでいいだろう?事前研修(チュートリアル)はお終いだ。攻略最下層(ハードモード)に挑もうじゃあないか」


 そう言い、呆然とした周りの冒険者達や私たちの訝し気な目など気に求めず、歩き始めた。


「ほらほら、早くきてくれないか。迷宮に行くのは久しぶりなんだ、楽しませてくれよ?」


 彼は目を細め、艶やかに笑う。小さな思惑を、胸に秘めながら––––––––。


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