二人だしそんなに怖くない。
洞窟で怜と分断されてからのエドワードとジークの冒険(?)
困ったことになりました。
不自然な洞窟を探検中、怜が壁の向こうに行ってしまって、戻ってこられなくなったのです。しかも彼女は、自分のいる場所が下がっているとまで言いました。
その直後、ゴゴゴゴゴ、という音が振動と共に聞こえました。エドワードとジークが音がした方向にさっと目を向けると、ぼんやりとした光が見えて、行き止まりだったはずが奥に行けるようになっていました。
奥の空間に明かりがあるようですが、それでもだいぶ暗いのでエドワードは空中で指をがーっと動かして、強引に自分の近くに明かりを作り出しました。すると、無くなった壁の先は今までと同じような通路であるらしいことがわかりました。
エドワードが、怜が消えた壁と現れた空間を交互に見て言います。
「これは……僕らはこっちってことか?」
誰かが回転する壁の向こうに行き、残った人は現れた空間に進むようになっているのではないかとエドワードは思ったのです。
「そうかもしれない」
ジークも同じように考えていました。
「レイちゃんは無事だよな」
「神様が送ってきたんだから大丈夫だ」
「……行くか」
エドワードのその言葉にジークがこくりと頷きました。
現れた通路の壁には所々に燭台が取り付けられていました。その燭台の上で蝋燭っぽい何かが周囲を照らしています。見た目は蝋燭ですが、蝋が溶けている様子はありません。炎は本物に見えます。
「明かりを持つ人と分断されて、これがある、か……」
蝋燭っぽい何かを見つめてエドワードがそう言いました。
「レイの方もこうなってるかもしれない」
「そうだといいけど」
エドワードとジークは後で知ることとなりますが、残念なことに怜は今、暗い中で懐中電灯と杖を握り締めてビビりながら行動しています。
まっすぐな通路を歩いていくと、左に階段がありました。上に続く階段を見てエドワードが「……何なんだ、ここ」と呟きました。
通路はまだ奥に続いています。エドワードとジークは相談して、階段を上がらずにまずは奥に進むことにしました。
奥には小部屋がありました。その小部屋に入ってすぐにエドワードが壁に埋まった石板を見つけました。石板には文字が刻んであります。
下り階段前可動壁:第一開閉切り替え装置で操作可
「あー……ええと、まず、どこかに階段が隠されてる。あと、開閉切り替え装置とかいうのがいくつかある」
エドワードが石板を読んでわかることを言って、ジークが頷きました。
「で、装置はたぶん上」
「レイが行った方かもしれない」
「ああ、そういうこともあるか……。それなら僕らが上に行って何かしないとレイちゃんがどうにもできないっていうこともあるな。じゃあ行こう」
小部屋を出たエドワードとジークは下りの階段がありそうな所を探しながら上りの階段まで戻りました。上りの階段の斜め向かいの壁に隙間があるのを見つけましたが、当たりでしょうか。
階段を上ってみると、下と同じような通路が右にも左にも延びていました。
「レイちゃんは迷ったら左にするらしい。どっちがいいと思う?」
エドワードに聞かれて、ジークは少し考えてから階段から見て右を指差しました。
「階段が曲がってたから、入り口があるのはたぶんこっち。下で入り口からそれなりに歩いて、行き止まりになってた。だから洞窟が広がってるならこっちだと思う」
「端の方にいるって考えたわけか。じゃあこっちにしてみよう」
洞窟の入り口のある方に行こうとした二人でしたが、一歩進んだところでジークが足を止めました。
「エド」
「ん?」
ジークは階段のある側の壁の低い位置を指差しました。何かの塗料で小さく文字が書かれています。
←遠回り?
何も無い←本当に無駄だった
「これって、今まで来た人の?」
「たぶんそう」
二人は階段を挟んで反対側も見てみました。丸や矢印など図形だけでした。
「こんなのがあるってことは、もしかしてここすっごく複雑?」
「団体様が駄目だったからな」
「はあ……。これ罠じゃないよな……?」
「レイが見つけたのも、エドが矢印見つけてレイが押したのも、もっと高い所に書いてあった」
「何かさせるならこの位置には書かないか。そうだな、僕なら、何かさせようと思ったら階段上ってすぐ見える向かいの壁に書いておく。それじゃ、これ信じてみよう」
そういうわけで、エドワードとジークは入り口がある方とは逆へ行ってみることにしました。
少し進むと道が分かれていました。右と左とまっすぐです。勇者とそのお供ですが別に洞窟(迷路)探検の経験が豊富なわけではない二人は、真っ先に今までここに来た人たちが残していったものを探しました。いくつも見つかりました。右を選ぶと無駄足、左とまっすぐは同じ所に出られるようですが……。
小部屋あり←見つからない←あった。不気味
↑
怖い←それより意味わからん
↑
無い
↑
××××××後に道発見←どれ←ばーか
まっすぐ行くと分かれ道があったり無かったりするようなので、左を選びました。
「ここって何かいるかな」
「レイが遊んでるのなら何かがよく襲ってくる」
「そうだな。で、僕らは物を探しにきてるから、奥にでっかいのがいるやつだ」
エドワードとジークは慎重に、でも怜に比べたらずっと気楽に洞窟を進んでいきます。明かりがあちこちにあって、仲間がそばにいて、二人とも別に怖がりではありませんから。
壁に残されたメモに従って道を選んでどんどん進んでいくと、広い場所に着きました。とりあえず壁に沿って歩いてみると、地面の一部分が不自然にへこんでいるのを見つけました。手で触ってみてもどうにもならないので、思い切ってエドワードがその場に立ってみました。
「あっ、今、なんか、押し込んだ感じがした」
周囲に変化はありませんが、メモでなんとなくわかっていたことなので、
「きっとそれでいいんだ」
と、ジークが言いました。
「じゃあ次行くか」
エドワードたちは引き返して、壁の情報を再び確認して違う道に入りました。その道をずっと行くと行き止まりになっていましたが、何かの装置が置かれていました。木の箱に金属の棒が付いています。
「これは……こうか?」
エドワードが棒を倒してみました。ここでも何もありませんでしたが、何かが変わったと信じて二人は来た道を戻りました。すると、何もない行き止まりだった所の壁がなくなっていました。
現れた道は一本道で、進んだ先にはまた広い空間がありました。蝋燭っぽい何かは一つしか設置されていませんが、今まで通ってきた通路のものと比べると豪華で、一つでもそこそこ明るいので大して問題はありません。
隅に、調べろと言わんばかりの岩があったのでエドワードたちは見てみました。
「あった。『明かりの右』だって」
岩に刻まれている字をエドワードが読みました。
二人は蝋燭っぽい何かの右側を調べ、そこの壁が手で動かせたので動かしました。
また通路が現れたのですが、真っ暗です。明かりありで優しいのはここまでのようです。
エドワードは蝋燭っぽい何かを使って、持ってきていた松明に火をつけました。そんな彼にジークが言います。
「あの光る紙は使わないのか」
エドワードは怜から光る紙を一枚渡されているのです。
「レイちゃんが三十分でああなる物を僕がこんな訳わからない所で使えるわけないだろ」
「でもあれの方が軽くて小さくていいかと思った」
「それはまあそうなんだけど」
エドワードとジークは真っ暗な道を進み始めたのですが、
「いてっ」
すぐにエドワードが天井に頭をぶつけてしまいました。
「ここ低くなってるから、ジークも気を付けろよ」
「わかった」
暗い道は大変な所でした。これまでのように地面が平らではありませんし、天井の高さも一定ではありませんし、幅が狭いです。しかもずっと複雑になっているようで、壁の情報が参考にならないこともあります。
エドワードもジークも少し不安に思い始めた頃、二人は他と比べると広い所にたどり着きました。行き止まりですが、壁に棒が付いていました。
「たぶんこれが、ここを複雑にしてる」
エドワードは見つけた装置を睨むように見ました。
今までの人たちが残していったものから推測して、これが開閉切り替え装置ではないかと彼らは思っているのです。第いくつかはわかりません。
どうやら開閉切り替え装置というのは複数のものを一度に動かすようで、動かすとどこかが開いてどこかが閉まります。棒の位置を変えたら、入り口まで逆戻りするということができないのです。他の装置と違って何度でも動かせるようなので、元に戻せば良いのですが、そうすると目標である下に向かう階段を出すことができません。
エドワードはジークに松明を持ってもらい、棒をぐいっと下げました。少しの振動と、どこかで何かが動いた音がしました。
「さて、ここからまた気合い入れていくか」
「ああ」
エドワードとジークは次の装置を探しに歩き出しました。分岐点だった所まで戻ると、自分たちが来た道がなくなっていました。
二人は休憩しつつもかなりのペースで洞窟を進んでいきました。暗い中で二つ目の装置を見つけるまでにエドワードは頭を三回ぶちました。ジークは、先を歩くエドワードが危ないことを教えてくれましたし、エドワードより背が低いこともあって頭は無事でした。
二つ目の装置は地面に埋まっていました。これはジークが踏んだところ、カチっという音がしました。どこが変わったかは不明です。
三つ目も地面に設置されていました。場所が違いますが、一つ目と同じものに見えました。恐らくこれも開閉切り替え装置です。エドワードが動かしておきました。
たまに屈んだり横歩きしながら先へ先へと進んでいった二人ですが、気が付くと最初の分岐点にいました。選ばなかった道から戻ってきたようです。とりあえず明かりのある所へ出ます。
「はぁ……まだ中にいるっていうのに外に出た気分だ」
蝋燭っぽい何かの明かりに少しほっとしながらエドワードが言って、ジークが「俺も」と頷きました。
「三ついじったわけだけど、これでいいのか?」
「駄目だったらまた探せばいい。俺たちなら大丈夫だ」
「そうだな。その時はその時でまた頑張ろう」
二人とも疲れましたが、必要とあらばまた暗闇を行く気力はありました。無いようなら勇者の候補にすらなっていません。
階段まで戻る際には、来た時と少し違うルートを選びました。そしてあったり無かったりする道と、その先の小部屋を発見しました。
小部屋の壁には、赤いひょろひょろとした字がでかでかと書かれていました。
「何だこれ」
まずエドワードがその字を見た人の多くが思うであろうことを口にし、
「嫌なやつと嫌なやつ」
ジークはただ読みました。
「不気味だけど脅かすのが目的にしては書いてあることがいまいち怖くないな」
「そうだな」
ならば暗号だろうと二人は思って、考えたり辺りを調べてみましたが、何もわかりませんでしたし、何もみつかりませんでした。
「僕らには無理か、ここじゃないか……落書き、だな」
とりあえず二人は小部屋を出ました。
下の階に戻ったエドワードたちは、さらに下る階段を見つけました。上でレバーを動かしたりボタンを押したりしたので、隠されていた階段が姿を現したのです。思ったとおりの位置の壁がなくなっていました。
二人は階段を下った先で、怜と、ついでに見た目が寒い青年と少々ひねくれている少年と白い猫と合流するのでした。




