ACT2 unconditional love 2
客室から船体中央に向けて歩いていくと、さすがに警告音が聞こえた。
仮の電源になっているのは同じだが、通路の隔壁が降りている。
火災の様子は見られないけど、警告は酸素が供給されている限定地区を案内していた。
で、これも二通りの考え方ができる。
火災による延焼を押さえる為、酸素を排出。
事故などにより、船体の破損による内充填物の流出。
さて、どっちでしょうか?
まぁ、どっちでもいいんだけど、長期航行で冬眠中の客はどうすればいいのでしょうか?
どうやらお休み装置は解除されてるし。
避難誘導はあったのか?
俺っちだけ仲間外れで取り残されていたとか?
やっぱり、えこのみぃだから?偽造パスポートだから?
否、それは違うか。
バレてたら船倉に入れられて、司法の方々に突き出されてるはずだもんね。
と、そんな無駄な事を考えていると、不意に重力が消失した。そして、鈍い破壊音。
ブーツが自動で壁に密着したので、微妙なへっぴり腰で固まる。
そこからめきょめきょと妙な音をたてて歩き出すと、外側の窓に張り付いた。
この外宇宙(三等外航路)用長距離輸送客船は古い形の物で、胴体部分にハンマー型の重力発生装置が三機取り付けられている。推進力とは別に、このハンマーが重力と船内のエネルギー供給を受け持っている。故に、三機全部が故障すると航行に支障はなくとも、船内の生命維持に問題が出てくる。
そして、それが一機破壊されたらしく、パラパラと破片が暗い世界に広がっていた。
当然余程の火力がなければ火花は見えない。
しかし、白い高温の炎とプラズマが走っているところをみるに、事故では無く人為的な破壊だと見受けられた。
うわぁ、せっかく奴隷商人みたいな雇い主から解放されたのに、嫌な予感がしますよぅ。
ここで子供の頃から培われてきた危険察知能力(貧乏第六感)を発揮すると、逃げた方がいいとでた。
しかし、ただ逃げたのでは宇宙の藻屑である。
ここが何処で、何が起きているのか、そして、逃げる手段を探し、かつ、藻屑にならないよう..。
すごい無理ゲーである。
どこかの惑星系の側ならいいけど、中継地さえないデッドな場所だと、直ぐに死ねる。
自殺希望者の楽園である。
バイザーに艦橋の情報案内が出るように調整する。
艦橋に近くなれば、案内が流れてるから勝手に拾ってくれるはず。
さて、どうするか?
ともかくスーツだね。
しっかりと生命維持装置ついてる宇宙服を探さないと危険。
という事で、案内地図を探して通路を走る。
めきょめきょめきょめきょめきょめきょ
イラッとくるが、簡易服のブーツはこんなもんである。
官給品のを履き慣れてたから、音がするとスゴいストレス。
銃弾の標的にならないように、あっちは消音ばっちりだったからね。
酸素供給地区レベル6迄カットシマス
隔壁番号ヲ確認
警告音に不穏な予備灯の効果的な照明。
一般人なら恐怖体験だろうね。
まぁ俺は辺境輸送船で働いてたから、それほど気にはならない。
毎日、戦争だっ!それお前等死んでこいってノリの船内船外作業だったからね。
なつかしぃねぇ~と、通路地図を発見。
何処にあるのかなぁ~?
簡易な地図なので、位置関係と場所の数字が記入されている。
ここから近い場所で、ありそげなのは~
と、地図にヘバリついてたら、第一乗客発見。
簡易スーツどころか、お寝間着のままの幼児発見です!
子供より、俺が絶叫した。
そして当然、絶叫した俺を見て、子供が泣いた。
親は何処~(怒)