20.夢からさめても
「――ロット、シャルロット!」
カーテンの開く音がする。とじたまぶたの上に、まぶしい光が降り注いで、シャルロットは目をあけた。
はっとして、がばりと起き上がる。
「は、はやく家に帰らなきゃ!!」
「シャルロット、なにを寝ぼけているの?」
「――え?」
ベットの横を見ると、エプロンをつけて腰に手をあてているママの姿。自分はベッドに寝ていて、窓からは朝の陽射しが射しこんでいた。
「早く着替えて、食堂にいらっしゃい。朝ごはん、あなたが大好きなフレンチトーストよ。飲み物は、オレンジジュースでいいわね?」
「う、うん……」
頭がぼうっとしたまま返事をしたが、シャルロットはまだ混乱していた。自分の体を見下ろすと、昨晩エプロンドレスに着替える前に着ていた寝間着姿だった。
「もしかして、夢、だったの……?」
クッキーと教会で待ち合わせしたことも。赤と白のしましまの竜に乗ったことも。楽園のようなオレンジの島にいったことも。手をつないで眠ったことも、ぜんぶ。
シャルロットがベッドから起き上がろうとしたとき、手にこつんと、固いものが当たった。
ふとんの下から出てきたそれは、昨晩たしかに食べた、太陽のオレンジだった。
*
「出場者のみなさーん、そろそろ出番ですよー!」
マーマレードコンクールの審査員のひとりであるスプーンおばさんが、控え室まで呼びに来た。
今日は待ちに待った収穫祭。そしてメインイベントであるマーマレードコンクールが、今から始まろうとしている。
あの夜のことは、クッキーと何度も話しあったけれど、どうして目が覚めたら家のベッドにいたのか、謎はとけなかった。
クッキーも先生に起こされて、ベッドの上で目を覚ましたらしい。そしてオレンジがひとつ、夢ではないことを主張するかのように手元に転がっていた。
あのあとふたりでそのオレンジを食べてみたが、あの島で食べた太陽のオレンジに間違いなかった。
シャルロットは収穫祭のために作られた特設ステージにあがり、客席にいる大好きな人たちの顔を見下ろす。
クッキー、プディング先生、ママ、そしてパパ。
あのあと、もう一度太陽のオレンジを描いた本に出会えないかと思って、書庫に足を運んだ。しかし、同じ場所にも、書庫のどこにも、その本は見当たらなかったのだ。
でもそのかわりに、とってもすてきなものを見つけた。それはシャルロットが、あの夜の冒険は本当にあったことだと確信するのに充分なものだった。
シャルロットはステージの中ほどまで進むと、“シャルロット・ドルチェ”と書かれた札の前に立ち、用意された道具でマーマレードを作り始める。
果物ナイフでオレンジを刻みながら、思う。
このマーマレードができあがったら、クッキーに最初に食べてもらおう。そして、だれの力も、なんの力も借りずに言うのだ。
「これからも、あたしのマーマレードを食べてくれる?」って。




