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12.短針と長針が重なるまで

 町の中心にある教会に近付くと、礼拝堂の尖塔に立てられた十字架がみえてくる。

 クッキーはもう先に来ていて、シャルロットに気付くと笑顔で手を振った。

「早いのね。私だって、早めに家を出たのに」

 シャルロットはびっくりして言った。クッキーのランタンの糸が短くなっているから、きっとだいぶ前からここで待っていたのだろう。

「シャルロットも早く来るだろうなと思ったし……。もしシャルロットのほうが先に着いちゃったら、夜中に一人で待たせることになっちゃうから」

「気にしなくていいのに、そんなこと」

 本当は嬉しかったのに、照れ隠しでぶっきらぼうな声を出してしまった。それに夜中に一人で待つ、というのだったら、クッキーだって同じではないか。

「だめだよ! シャルロットは女の子なんだから。夜はあぶないことがたくさんあるって、いつも先生が言ってるもの」

 女の子だから。その言葉にかあっと胸が熱くなるのを感じた。ほてったほほに、つめたい夜の風が気持ちいい。

「あ、ありがとう。でも、夜ってそんなにあぶないものなのかしら? あたし、夜がこんなにすてきなものだったなんて、知らなかったわ。ちっともこわくなんてない」

「うん。ぼくも、知らなかった。シャルロットと冒険しなかったら、もっと先まで知らないままだったかもしれないね」

「あたしも、きっとそうだわ」

 教会の三角屋根の壁についている時計を見上げる。もうすぐ、長針と短針が重なる。十二時になるのだ。

 今この時間に、ふたりでいるのが信じられない。竜があらわれなくても、このままふたりでいられたら、それだけでいいと思ってしまった。まだ、十二時にならなければいいのに。時計が進むのが、ゆっくりになればいいのに。

 クッキーは今、どんな気持ちなんだろう。シャルロットがこんなことを考えているとわかったら、怒るかもしれない。

 シャルロットは、不謹慎な自分の気持ちを、必死でおしこめた。

「渡し賃になるマーマレードは、持ってきた?」

 クッキーに問われて、シャルロットはエプロンのポケットから、マーマレードのびんを取り出して、見せた。

 マーマレードコンクールの予選のときに作ったものだった。今まで作ったマーマレードの中で、一番の自信作だ。

「竜に、気に入ってもらえるかしら」

 今になって、不安になってきてしまった。太陽のオレンジの島に行く以前に、その背に乗せてもらえなかったら。

 もし、竜に気に入ってもらえなかったら、コンクールで優勝できなかったときよりももっと、落ち込むに違いない。

「大丈夫だよ。シャルロットのマーマレードなら」

 クッキーのほうはまったく不安を感じていないようだった。シャルロットのマーマレードを、信じてくれているんだろう。

「うん、そうよね」

 胸がぽかぽかして、自信がじんわりと広がってきた。

「……もうすぐ、十二時ね」

 三角屋根の壁の部分に取り付けられた時計を見上げる。

 シャルロットとクッキーが息をのんで見守る中、ゆっくりと、短針と長針が重なった。


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