サンタは押し込み強盗
散々な夜でした。
まずもって台数不足です。4台分の人数がズル休みしました。
突然の休みなのでインチキも対応不能です。
クリスマスの土曜日というダブルパンチに人数不足。
忙しくないわけが無いっ!
おまけにインチキ配車炸裂です。
オレと自称・チャラ男ことMNくんが組むと基本的に変な客ばかり当ててきます。
22時30分、
「9号車!」インチキ
「はい」オレ
「三輪小学校の正門前、関口宅」インチキ
「了解」オレ
向かいました。
ありました。
サーチライトで表札を確認し、チャイムを鳴らします。
ピンポーーーン!!!
チャイムの作動に連動してインターフォンのライトが点灯しオレを照らします。
関口宅、無反応。
とりあえずもう1発鳴らしました。
ピンポーーーーーン!!!
「は、はい・・・」関口宅
「代行の者ですけど!」オレ
「・・・あのう、頼んでませんが・・・」関口宅
「この辺りで、ほかに関口さんってありますか?」オレ
「ないです・・・」関口宅
とりあえず、オレは関口宅の玄関前でライトに照らされたまま仁王立ちです。
「た、頼んでないです・・・」関口宅
「ちょっと確認してきます」おれ、ムッとしました。
代行車に戻って無線を入れます。
「1号車!」オレ
「はい」インチキ
「関口さん、頼んでないって!」オレ
「はい?場所間違ってない?三輪小の正門前だけど!」インチキ逆ギレ
「三輪小の正門前、関口宅はここだけ! 関口宅は頼んでないし、リビングの灯りも点いてないし、たぶん寝てたよ!」オレ
「なんだそれ!?」インチキ
それはコッチのセリフです。
1分後、
「9号車!」インチキ
「はい」オレ、不機嫌。
「もしかしたら村田さんかもしれない」インチキ
「はぁぁぁ?」オレ
「たぶん村田さんだと思います」インチキ
クサレインチキ、客の名前も聞かないで、住所だけ聞いて、勝手に地図で場所を確認して配車してるようです。
インチキの車載地図は個人宅名まで載ってるので、それで勝手に判断してるようです。
村田宅、関口宅の隣りにありました。
リビングも明るく、チャイムを鳴らすとすぐに出てきました。
「9号車、確認できましたか?」ノーテンキで無責任なインチキ
「もう、発車してるけど」オレ
「了解」インチキ
三輪の高級住宅街でのクリスマスイヴの夜。
たぶん、子供たちはプレゼントに心躍らせて早めに就寝し、若い夫婦は年に一度の「聖なるイベント」に新鮮な気持ちで「性なるイベント」を開始してたかもしれません。
ああ、なのに、
当然のチャイム2発!
夫婦は1発目の最中なのにチャイムは2発です。
思いがけない不意打ちに中折れしながらも、ビクビクしながらインターフォンを確認する関口氏、
そしてインターフォンの向こうにはメガネにマスク、スタジャンを着て、サーチライトで家を照らすオトコ(オレ)の姿が映ってます。
ビビらないはずがないっ!
本来ならサンタがこっそりと煙突から入ってくるはずの夜に、見知らぬオトコが顔を隠し、サーチライトで家を照らしながらインターフォン前で仁王立ち!
押し込み強盗です。
クリスマスイヴのどさくさに紛れての強盗に見えたと思います。
普通ならケーサツに通報します。
オレならそうします。
でも、心優しき関口氏、いまでは恐怖ですっかり縮こまった聖剣とともに消え入りそうな声で静かにフェードアウトしてくれました。
もう少しで偽サンタとして捕まるかもしれなかったオレとMNくんです。
インチキもオレらと関口宅の怒りに気づいたのか、ちょっと柔らかなトーンで無線で話すようになりました。
で、1時間後、
「9号車!」インチキ
「はい」オレ、まだちょっと不機嫌
「中央三輪5丁目の○○ハイツの203号室へ」インチキ
「了解」オレ
到着。
203号室のチャイムを鳴らしました。
無反応。
おまけに部屋が暗い。
不審に思ってとりあえず建物の2階から降りている最中、1階の103号室から人が出てきました。
「代行のかたですか?」103号室の住人
「はい」マスクのオレ
「頼んだのはウチです」103号室
慌てて発車しました。
発車する寸前、203号室のリビングのライトが点き、カーテンの向こうから男女が覗くのが見えました。
押し込み強盗2回目。ホーリーピンポンダッシュ!
「また部屋間違ってるって!」オレ、怒ってインチキに無線を入れました。
「はい了解」忙しいとばかりに誤魔化すインチキ
「5号車!」ワザとらしく配車をするインチキ、あきらかに動揺してます。
「5号車はアクアピル(正しくはアクアビル)に向かって!」インチキ
聖なる夜に「ピル!」って叫ぶインチキが情けない。
寝る。
マジで。




