愛が溢れて
なんともハチャメチャな夜でした。
まずね、郊外の居酒屋から地方に走る仕事です。
嫌な予感がしました。
バディが”やーくん”のときにインチキが楽な仕事を割り振ってくるときはロクな客じゃありません。
的中。
◯◯◯地区に帰る母子家庭。
ベロンベロンです。靴もろくに履けない。
で、いつものワードを発します。
「ケイチー出てるの?ケイチーと知り合いだから安くしなさい!」アホ女
ケイチーの名前を出す人間にろくなヤツがいないのは、この4年間で身に沁みるほど分かってます。たいがいがゴロツキから成長しないで中年になったヤツです。
一方で知っていても名前を出さない人は成功してる人です。
その程度で利用する意味もないことが分かってる人。
さて、ゴール。親子の家に着きました。
まだ値引きのことでゴネてます。
「ケイチーの知り合いなのに安くできないの?」オンナ
「出来ないし、後ろのドライバー(オレ)は料金に厳しいから」やーくん
「いいから安くケイシに電話しなさい!」オンナ
困ったやーくん、金を払おうとしない相手の前でケイチーに電話しました。
「もしもし?◯◯◯地区のオンナの人なんだけど、ケイチーさんの知り合いだから安くしろっていうんだよねー」やーくん
「え?え?知らない?知り合いじゃないの?」やーくん、フリーズ。
ここでやーくんがケータイをオンナに手渡しました。
「ケ、ケイチーさん? は、はじめまして。わたし、○○さんと○○さんの知り合いの○○といいます」オンナ
知り合いじゃないじゃん!!!
友達の友達はみな友達だ。
ここからみっちり約10分間、自己紹介トークが続きました。
で、ようやく通話が終わるころ、オンナがケイチーに自分のケータイ番号を伝えました。
「ね、ね、約束だよ。必ず電話してね。ね」オンナ懇願してます。
昔はどんなのか知らんけど、いまのヘナチョコケイチーに懇願するなんて、自分のツンコをいじくり回してるサルに求愛するようなものです。
電話を切りました。
オレは通常料金を請求。
通話に満足したオンナはウットリとした顔でアルコールに震える指を使って正規料金を払いました。
そこに!
着メロが鳴りました。
アホアホケイチー、余韻冷めるまもなくいきなりオンナに電話してきました。
オンナのケータイを通じて「ハァ、ハァ」言うケイチーの声が聞こえてきました。
「もう、かいっ!」オレが言いました。
オンナの一本釣りが成功しました。
そのとき!
「いつまでクルマに乗ってるの!」家の中からオンナの子が怒鳴ってます。
バカな親のもとでは利口な子が育つという定説は間違っていませんでした。
子供を放置して酒と男に溺れるバカオンナ。
出会いに酔い、打ち震える酒乱オンナと、したくてしたくて、させてもらえるなら曙太郎でもかまわないというケイチー。
ここに短くも哀れな愛が生まれました。
帰りがけ、やーくんがいいました。
「頭にくるなー! バカオンナのせいで電話代1000円がパーだよ!」
やーくん、諸般の事情からプリペイドケータイを使ってます。
先日3000円をチャージしたばかりです。
それをバカ同士の出会いのために1000円分がパーになってしまいました。
オトコとオンナは出会うために探しあってます。
さて、次、インチキからの配車です。
「○○に行ってー」インチキ
またまた嫌なキーワードです。
ホモの噂が絶えない店長のいる美容室です。
いつも長髪の男性スタッフと長髪同士でイチャイチャしてます。
女性スタッフを帰したあと、いつも二人でしっぽりしてます。
でも、ある夜のこと、
オレらが真夜中に店の前を通ったら煌々とした店内の奥で、スーツ姿のイケメンを調髪するホモ店長の姿がありました。たしか午前2時くらい。
こわいね。
で、昨夜。
店に到着しました。
真っ暗です。
でも、奥のほうに薄っすらと不気味な灯りが見えます。
ドアをつかんでみてもカギがかかってます。
インチキに無線を入れて、店に電話するように言いました。
3分後、人影が2つ現れて外に出てきました。
「オンナだな」やーくん、そう言うと人影に向かって歩いていきました。
「あ!」オレが言いました。
やーくんが「オンナ」といった相手は髪の長い男性スタッフでした。
ヘッドライトに照らされた顔がピンクに火照ってます。酒の類でないことは火を見るよりも明らかです。
腰にチカラが入っていない歩き方。
あと1ヶ月で恋人たちのクリスマスです。
みなに幸あれ。




