シッコさん
昨夜組んだドライバー、訳あり採用です。
いままでの全職場から逃げ回って生きているようです。
なんせ、自分のクルマをどこかに隠してから出勤してきます。
なんせ、買ってから1円も払ってないらしい。
「よろしくお願いします」もうね、胡散臭さが光速で伝わってきました。
っていうか、クサイ!!!
どうクサイかというと、シッコのニオイです。
具体的に言えば、公衆便所をミキサーにかけて、それに牛乳とセロリを加えて、それを2年以上常温発酵させた感じの5倍濃縮したヤツ。
それが光速よりも早くオレの嗅覚を攻撃してきました。
5歳以下なら致死量です。
オレはかろうじてタバコの煙よけのマスクをしてるから良かったものの、それでも死の香りは十分に通過してきました。
車外に逃げました。
すかさず、他の車両からも仲間が3人飛び出してきました。
「ど、どうしたの?」仲間たち
オレが車外に逃げ出すなんて異例の事態ということを察知したらしい。
「魔王さんが外を徘徊するなんて珍しいから出てきちゃった」性感指圧師のKY氏、若いMNくん、Y氏。
泣きながら訴えました。
「臭くて鼻がもげちゃった」オレ
仲間ももらい泣きしてます。
嗚咽してます。
「オ、オレもクサイとは思ってたんだよねー」前に組んだことのあるKY氏
なんせ、クーラーつけて窓を全開してもニオイが「これでもかっ! これでもかっ! どうだっ!」って攻めてきます。
オレがニオイに弱いことと知っての狼藉かっ!
午前4時半、
悪臭の中での残業という懲役を終え、ようやくニオイから解放されました。
そして、悪臭の根源ともいうおっさんは、車内に十分な致死量の化学兵器を撒き散らし、どこかに隠してあるという愛車のほうに向かって帰っていきました。
帰りがけ、
「あのひと、家はあるの?」オレ
「知らない。エヘエヘ」インチキ
「風呂は入ってる?」オレ
「知らない。エヘエヘ」インチキ
インチキ代行、今夜も絶好調。
死人以外、誰でも採用します。
帰ってきて服のニオイを嗅ぎました。
見事にシッコのニオイです。
裸体のニオイを嗅ぎました。
やっぱりシッコのニオイです。
全身一皮剥きたくなりました。