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新米運転代行~序章~

飲んだら乗るな、で使うことになる運転代行。最近は取り締まりも厳しいので、クルマでしか飲みに出られない人々は利用する場面も増えているような。

タクシーとは違い、お客のマイカーを運転するという特異な商売。それでなくても得体のしれない「酔っ払い」を相手に大事なクルマまで目的地まで運ぶという任務をこなすドライバーの知られざる生態をノンフィクションで書き残すことにしました。あまりにもアンタッチャブルなので。

新たなチャレンジに失敗したことによる借金返済のため、知り合いの知り合い(通称・トミー)の紹介でたどり着いた運転代行ドライバー見習い。

二種免許がなくても、客車に乗らないならその日から勤務OK(日払い)ってことで、早速行くことにしました。


知り合いの知り合い(トミー)に指定された勤務場所に行ってみてビックリ。

なんと!青空駐車場!それも総合病院の職員駐車場です。


「なにせ、経営者(運転代行の)がインチキだからさあ」トミー

代行に使う同伴車両数台分の場所を借り、夕方以降、病院職員が帰って空きになった場所に客車をプール(預かり)する場所として勝手に!使っているらしい。勝手にっ!


さて、代行見習い初日、初体面のトミーに連れられて、代行社の代表に会いました。

「エヘエヘ、じゃあよろしくおねがいします」なんとも奇妙な経営者。経営者自らドライバーです。中古のポンコツ自家用車に、屋号が書かれたマグネットステッカーを貼って営業しています。


「じゃあ、Mくんと組んで。エヘエヘ」経営者、どうも気味が悪い。


M氏は2号車で待機しているらしい。向かいました。


「今日からお世話になります」オレ

「うん」M氏、そっけない。巨漢。天然パーマ。激烈タバコ臭。


ここから約7年間にもわたる運転代行ドライバーのへんちくりんな日々が始まりました。


で初仕事。

さて、M氏とやら。まあ、見た目は自己管理のできないミディアムファット。

でも、奇妙なことに強烈にせっけんの香りがするの。

男がせっけん臭のコロン!


まあ、いい。


とりあえず仕事を進める中で、彼がいきなりオレに携帯画面を見せてくれた。

「なに?」オレ。

「かわいいでしょ?」M氏。


まあ可愛いけど素朴な感じの女性が待ちうけになっていた。


「誰?」オレ。

「工場の女の子。中国から実習に来てんの」M氏、昼間は海鮮工場でバイトしているらしい。


もう、そこからは独演会。

いかに彼女が可愛くて、ほかの中国人よりも可愛いか、そしてどこの出身で、どんなものを食べているかなど、すごく詳しくその中国女について語り出す!

でも、何か変。

特に写真が。

「その写真どうしたの?」オレ。

「とったの。こっそり」M氏。

盗撮である。

ストーカーなんですな。

情報も直接本人から聞いたわけではないらしい。

本人よりも中国女に詳しいアカの他人。


そういえば、あとで聞いた話では、カレの趣味は盗聴。

ヒマなときは一日中、無線機でいろんな電波を傍受してんの。

怖いだろ?

おまけに40超の独身で家中に「くまのぷーさん」のぬいぐるみがたくさん飾ってあるらしい。

怖い。泣きたい!

それを聞いたとき、若干ですが尿管がゆるみました。


でも、とりあえずオレに危害は及んでないからね。

カレの趣味にどうこう言う資格ないし。

でも、中国女、大丈夫かなあ。

そんなことを考えながら、狭い軽自動車内で互いにイスを倒して休憩(待機)。


・・・・・?

寝ながら背伸びをして両手を自分の頭の裏にもってこうと思ったその瞬間!


・・・・・?


なにやらシットリとしたものが手に触れた。

な・何?・何かな?


オッサン、オレに腕枕しようとしてんの!!!


ギャーーーー!


勘弁してよ。

オレ怒っちゃった。


オレは腕枕するのは好きだけど、されるのはなあ。

それも男はちょっとなあ。


っていうか冗談じゃねえ!!!


すぐさま、コンビ解消!


「カレとは誰も組みたがらないんだよねえ」

クルマに乗り込む前、トミーが言ってました。



首筋に残るせっけんの香り。

「これが女の子の残り香だったらなあ」


手に残るシットリ感。

早朝3時、代行初日に人生の終わりを実感しました。

みなさまのポイント評価が執筆意欲を爆上げします。

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