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第99話 エピローグ(後日談)

十年後


東京の小さな民俗学博物館。


「八雲島展」と題された特別展示室に、一人の少女が立っていた。


「お母さん、これが慎一おじさん?」


写真を指差す少女に、母親が優しく答えた。


「そうよ。お母さんの従兄弟。とても優しい人だった」


佐藤美月——かつて水の因子に苦しんだ慎一の従妹は、無事に症状を克服し、今は二児の母となっていた。


展示室の中央には、木村が編纂した『八雲島水籠記』が置かれている。そのページは、自然に風もないのにめくれていく。まるで、見えない誰かが読んでいるかのように。


「おじさんは、今どこにいるの?」


少女の純粋な問いに、美月は少し考えてから答えた。


「いつも、そばにいるよ。雨の音の中に、川のせせらぎの中に、海の波の中に」


少女は不思議そうに窓の外を見た。


折しも、梅雨の雨が降り始めていた。


その雨音に耳を澄ませると、確かに聞こえるような気がした。


優しい声で、古い物語を語る人の声が。


永遠に、語り継がれていく物語が。

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