第95話 政府の対応
緊急対策本部が設置された。
しかし、政府にできることは限られていた。
「隔離するしかないのか……」
厚生労働大臣が苦渋の表情で言った。
しかし、篠田教授が反対した。
「それでは、千年前の過ちを繰り返すことになる」
篠田は、新しい提案をした。
「彼らに選択肢を与えるべきです」
「水籠になるか、語り部になるか、それとも第三の道を探すか」
しかし、官僚たちは懐疑的だった。
「第三の道など、あるのですか?」
その時、会議室に一人の女性が入ってきた。
水野香織だった。
いや、正確には香織の意識の一部が、水の体を借りて実体化した姿だった。
「あります」
香織が言った。
「父が最期まで研究していた、もう一つの方法が」
香織は、父の最後の研究を説明し始めた。
「水の因子を持つ者は、確かに水に還る運命にあります」
「しかし、その還り方は一つではありません」
水野教授は、水籠でも語り部でもない、第四の道を模索していた。
「共生です」
香織が核心を語った。
「人間の意識を保ちながら、水の性質も受け入れる」
「昼夜で姿を変えるのではなく、常に両方の性質を持つ」
それは、あかねの現在の姿に近かった。
しかし、より安定した形。
「ただし、条件があります」
香織が続けた。
「強い精神力と、明確な生きる目的」
「そして、誰かとの深い絆」




