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第87話 融合の後

清明井の底で、三つの意識が一つに融合していく過程は、想像を絶する体験だった。


慎一、夕日、朝日。それぞれが千年、あるいは二十数年の記憶を持ち、今、それらが混ざり合おうとしている。


『痛い……』


最初に感じたのは、激痛だった。


異なる時代、異なる価値観、異なる感情が衝突し、意識の中で爆発を起こす。


『これが……千年分の記憶……』


慎一は、夕日と朝日の記憶に圧倒されそうになった。


千年前の島の風景、まだ緑豊かだった頃の八雲島。そして、二人の少女の幸せな日々。


『私たち、本当に仲が良かったのよ』


夕日の意識が、懐かしそうに語る。


『朝は一緒に水を汲み、昼は一緒に祈りを捧げ、夜は一緒に星を見た』


『それが、一人の男のせいで……』


朝日の意識に、まだ憎しみが残っていた。


『違う』


慎一が割って入った。


『それも含めて、人間の物語だ。愛も憎しみも、すべて語り継ぐ価値がある』


三つの意識は、少しずつ調和を見出していく。


それは、単純な融合ではなかった。


三つの視点を保ちながら、一つの存在となる。


まるで、三つの楽器が奏でる和音のように。

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