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第84話 白石ゆりの正体
その時、白石ゆりが前に出た。
次期巫女候補の少女。しかし、その瞳に宿る光は、十六歳の少女のものではなかった。
「やっと、時が来た」
ゆりの体が、変化を始めた。
しかし、それは水への変化ではなかった。
光への変化だった。
「私は、千年前に朝日様が残した、希望の欠片」
ゆりの正体は、朝日が自らを封印する直前に残した、意識の一部だった。
「姉様が狂気に陥った時、それを止めるための、最後の切り札」
ゆりの体が、完全に光と化した。
そして、その光は慎一の水の体に吸い込まれていく。
「これで、すべてが揃った」
ゆり――朝日の希望が言った。
「新しい語り部の誕生」




