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第83話 島民たちの選択
戦いの音は、島中に響き渡った。
そして、ついに島民たちが動き始めた。
まず現れたのは、キヨだった。
「もう、終わりにしましょう」
老婆の声は、穏やかだった。
「千年も、十分すぎるほど長かった」
キヨの体が、ゆっくりと水に変化していく。しかし、その表情は苦痛ではなく、安らぎに満ちていた。
次に、甚助が現れた。
「真珠……やっと一緒になれるな」
老船頭は、海を見つめていた。
「でも、今度は違う。苦しみじゃなく、物語として一緒になれる」
甚助も、自ら水に還っていく。
そして、伊織神官が最後に現れた。
「八重垣家、最後の当主として、決断する」
伊織は、古い巻物を取り出した。
「これは、初代神官が残した真の祝詞」
そして、読み上げ始めた。
『水は巡りて終わりなし
されど人の心は留まる
物語となりて永遠に
真実を語り継がん』
それは、呪いの祝詞ではなかった。
祝福の祝詞だった。
水籠を、語り部へと変える、新しい祈りの言葉。




