表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/99

第81話 新たな契約

慎一は、戦いの中心に向かって進み出た。


「渟の神よ! 朝日よ!」


水の体から発せられた声は、島全体に響き渡った。


双子の姉妹が、戦いの手を止めて慎一を見た。


「私は、新たな契約を提案する」


慎一の意識が、さらに拡大していく。


「水籠システムを、語り部システムに変える契約を」


夕日が嘲笑した。


『語り部? 何を馬鹿なことを』


しかし、朝日は違った。千年間、氷の中で孤独に過ごした彼女は、慎一の提案の意味を理解していた。


「続けて」


朝日が促した。


「水籠は、ただ苦痛の中で永遠を過ごす」


慎一が説明した。


「しかし、語り部は違う。彼らは物語を内包し、それを伝える使命を持つ」


「苦痛を与える代わりに、物語を与える」


「死を与える代わりに、永遠の声を与える」


慎一の水の体が、さらに変化を始めた。


透明な水が、虹色に輝き始める。それは、無数の記憶が光となって現れているのだった。


「見よ、これが私の選んだ道」


慎一の体から、記憶が溢れ出した。


七歳の時の井戸の記憶、大学での研究、あかねとの出会い、島での体験。すべてが、生きた物語として水の中で輝いている。


「これらの記憶は、永遠に残る。そして、新たな記憶も加わり続ける」


夕日が動揺した。


『それは……まさか……』


「そう、新しい形の永遠」


慎一が言った。


「苦痛の永遠ではなく、物語の永遠」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ