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第76話 語り部の決断
慎一は、すべてを理解した。
千年の呪いの真実。
それは、すれ違った姉妹愛が生んだ、悲しい物語だった。
「夕日さん」
慎一が、優しく語りかけた。
「あなたの物語を、永遠に語り継ぎます」
「朝日さんの物語も、一緒に」
夕日が、驚いたように慎一を見た。
「本当に……?」
「はい」
慎一は確信を持って答えた。
「二人の姉妹の、美しくも悲しい物語として」
「愛と誤解と、そして永遠の絆の物語として」
夕日の姿が、さらに変化した。
千年の憎悪が、少しずつ溶けていく。
「でも……もう遅い……」
夕日が、悲しげに言った。
「システムは、止められない」
「私も、もう人間には戻れない」
「それでも」
慎一が言った。
「物語として生き続けることはできる」
慎一は、あかねと美咲を見た。
「彼女たちのように」
あかねと美咲も、姉妹の絆で結ばれている。
そして、今、同じ悲劇を繰り返そうとしている。
「終わらせましょう」
慎一が提案した。
「千年の繰り返しを」
「新しい物語を、始めましょう」




