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第64話 慎一の変貌
慎一は、分散した意識を少しずつ集め始めた。
しかし、完全には集めない。
一部は第八の井戸に残し、朝日と香織を守る。
一部は深海医師の研究室に残し、彼の研究を継承する。
一部は神社に残し、ゆりと伊織の動きを記録する。
そして、本体は……
慎一は決意した。
自ら、清明井に向かう。
完全な水籠になる前に、渟の神と直接対峙する。
それは、極めて危険な賭けだった。
不完全な状態で神と対峙すれば、精神が完全に破壊される可能性がある。
しかし、完全な水籠になってしまえば、もう選択の余地はなくなる。
今しかない。
語り部として、すべての真実と向き合う時が来た。




