62/99
第62話 白石ゆりとの対峙
さらに別の意識は、神社で衝撃的な場面を目撃した。
白石ゆりが、一人で祝詞を上げていた。
しかし、その内容は通常の祝詞ではなかった。
「千年の契約は、今宵満ちる」
「新たなる語り部が、真実を紡ぐ」
「水は記憶し、風は運び、大地は刻む」
慎一は驚いた。
ゆりは、慎一の選択を予見していたのか?
「聞いているのでしょう、羽生慎一」
ゆりが、慎一の水の意識に向かって語りかけた。
「あなたの選択は、正しい」
「でも、代償も理解しているの?」
慎一の意識が応えた。
『永遠に、人間には戻れない』
「そう。でも、それだけじゃない」
ゆりの目が、一瞬悲しみに染まった。
「語り部となった者は、すべての苦痛も記憶する」
「千年分の死と、絶望と、狂気を」
「それでも、語り継ぐ覚悟はある?」




